無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

そのカクテルは口当たりがよく、飲みやすい。

「マスターおかわりをお願いします。」

マスターは静かに頷くとシャカシャカとシェーカーを振り出した。
もともとお酒は強くない。
一杯でもほんのり酔いがまわっているのが分かる。

２杯目のカクテルを飲み終わった時だった。
隣の男がこちらを見た。

「おい…飲み過ぎるなよ。そのぐらいで家に帰れ。」

見ず知らずの男に何か言われたくはない。
私は自暴自棄になっていた。

「もうどうなってもいいの！それに…帰る家なんてないのよ！」

やつあたりするつもりは無い。
しかし、誰かに何か言わずにはいられない気分だった。

「帰る家がない？…なんか意味深だな」

その時、何故か私の目から温かいものが流れ始めた。
泣きたくないのに、もうどうすることも出来ない。

すると、隣の男がすまなそうに話し出した。

「悪かったな…余計なことを言ったようだな」

「ねぇ…もし悪いと思っているなら、私を今晩連れて帰ってくれない？」

「はぁ？何をいっているのか意味が…」

私は男の言葉を遮るように話し出した。

「私の体じゃ不満だよね…魅力もないから抱く気にもならない…だから浮気されて当然だよね！」

すると、その男はフッと小さく微笑んだ。
よく見るとドキッとするくらいセクシーなイケメンだ。
初めて見た時も感じたが、どこかで見たような気がするが思い過ごしかも知れない。

「君は充分可愛いし、魅力的な女性だよ」

なぐさめの言葉なんて欲しくなかった。

「それでも私を抱く気にはならないでしょ…お世辞は結構です」