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──拝啓、支配様

第2章 2

 空気が張り詰める。ぴたり、と時が止まったように教室が静まり返り、皆が杏菜の言葉に耳を傾けざる負えなくなる。

 杏菜は毛先を触りながら、気怠そうに言葉を紡いでいく。

「確かに人が増えるのは良いけど、口外されるのもヤダし、興味本位で首突っ込まれても困るんだよね」

 確かにそうかもしれない。責めるような声色でもなく、この状況に居れば誰しもが思うさも当たり前のことだろう。

だが、彼女の言う通り……結局重要なのは自分がどうしたいか。だろう。ここまで聞いたのに自分は何もせずにここから去れるのか​────。

 とてもそんな気にはなれない。なぜか……答えは変わらない。

 まるで自身の浅ましい考えが透けて見えてしまったようで、大きく溜息をついた。然し同時に、嘘を告げるような醜い感性も、今の僕は持ち合わせていなかった。

「……今の段階で、興味以外で口を挟む理由は無いと思いませんか?」

「は?」

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