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──拝啓、支配様

第4章 4

沈黙は肯定。何も言うことがなく、押し黙るしかない、そして結果として数秒後始まったものは​───────。

「あのさあ、これって美麗が悪くない?」

くだらない失敗の押し付け合いだった。

「あんたがちゃんとしてればこんな事にならなかったんじゃん!」

「ちょっと、何を言っているの? 私は只、先生に従って​────」

「いい加減にしろ! お前ら黙らないか!? さもなくば……」

椅子か机か。今にも物が飛んで来そうな諍いをただ僕は眺めた。一触即発。その空気もなんだか、周りが僕に負けたと認めたようで、少しだけ優越感を覚えた。

​───僕ってこんな空気も作れるんだ。

​─── 僕ってこんなにも周りを掻き乱せる人間なんだ。

僕って案外すごいんだ。

自身の中で肯定感が産まれた時、諍いを止めるように、ひとつ手が挙がった。

「​── みんな、落ち着いてほしいんだけど……」

それは、思わぬ位置から上がった手だった。

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