ハズビンBL ルシアダ/アダアラ
第2章 【R18アダアラ※流血あり】悦びに落ちる鼓膜
拘束具のように腰元に回された逞しい腕に、不満ながらも頬杖をつく。
風を切る騒音と不快な浮遊感に舌打ちをしたいところだ。
「同行は地獄までにしてください。天国に"下る"気はない」
「はははっ! 連れてかねえよ。部下を殺されちゃ仕事が増える」
本末転倒だろ、と心底暗い声で呟くものだから、ついその顔を見上げてしまった。
漆黒のマスクに覆われた顔の輪郭に、つい視点が固まる。
下がった頬が告げている。
ひどく、疲れていると。
そしてそれはひどく不都合な事実だ。
この両足が次に床を踏みしめる時、どれほどの理不尽が待っているかを予期して、アラスターは風に抗うように息を吐いた。
数分の飛行の後に、二階建ての廃墟の屋根の穴から降ろされた。
愛しの影たちが衝撃を和らげるように踵に群がる。
アダムはそれを一瞥してから、腕をといた。
そこは人気の少ない街はずれの、夜空の良く見える吹きさらしの寝室だった。
粛清の攻撃によるものか、二面の壁以外は部屋を包むことを放棄している。
屋根には大穴が空き、ドアがあったであろう壁は吹き飛ばされて階段だけが見えている。
かろうじて残った壁には飴細工のようにもろい窓が張り付き、古いペンキがぶちまけられたようにすべてが汚れていた。
それでもここを寝室たらしめているのは、無駄に大きなダブルベッドのお陰だ。
天蓋は見る影もなく雑巾のように垂れ下がり、シーツは破れている。
それでも、役割さえ果たせば、今宵は十分な舞台になる。
風を切る騒音と不快な浮遊感に舌打ちをしたいところだ。
「同行は地獄までにしてください。天国に"下る"気はない」
「はははっ! 連れてかねえよ。部下を殺されちゃ仕事が増える」
本末転倒だろ、と心底暗い声で呟くものだから、ついその顔を見上げてしまった。
漆黒のマスクに覆われた顔の輪郭に、つい視点が固まる。
下がった頬が告げている。
ひどく、疲れていると。
そしてそれはひどく不都合な事実だ。
この両足が次に床を踏みしめる時、どれほどの理不尽が待っているかを予期して、アラスターは風に抗うように息を吐いた。
数分の飛行の後に、二階建ての廃墟の屋根の穴から降ろされた。
愛しの影たちが衝撃を和らげるように踵に群がる。
アダムはそれを一瞥してから、腕をといた。
そこは人気の少ない街はずれの、夜空の良く見える吹きさらしの寝室だった。
粛清の攻撃によるものか、二面の壁以外は部屋を包むことを放棄している。
屋根には大穴が空き、ドアがあったであろう壁は吹き飛ばされて階段だけが見えている。
かろうじて残った壁には飴細工のようにもろい窓が張り付き、古いペンキがぶちまけられたようにすべてが汚れていた。
それでもここを寝室たらしめているのは、無駄に大きなダブルベッドのお陰だ。
天蓋は見る影もなく雑巾のように垂れ下がり、シーツは破れている。
それでも、役割さえ果たせば、今宵は十分な舞台になる。