ハズビンBL ルシアダ/アダアラ
第2章 【R18アダアラ※流血あり】悦びに落ちる鼓膜
重厚な翼の音に眉を潜めて空を見上げるのは、赤いスーツに身を包んだ男。
長い足をぴたりと揃えて、大仰にため息を吐く。
手にしたマイクを半円を描くように背中に回し、望まぬ来訪に備えて路地の壁にもたれかかる。
足元から蠢いた影が臨戦態勢に入るのをつま先でなだめる。
翼の持ち主はもったいつけるように緩慢な動作で目の前に降りてきた。
「よお、バンビちゃん」
礼節の一つもないその挨拶に、張り付けた笑顔も崩れそうになる。
「あー? なんで返事が聞こえねえんだ。ラジオデーモン様?」
「聞こえてますよ、相変わらず聞くに堪えない声だ」
何か言葉が返ってくればそれで満足とでもいうように、目の前の傲慢な男はにんまりと微笑んだ。それから、大きな体を威嚇するようにさらに大きく腕を広げる。
その右手に握られた金色の武器にぞくりと背筋に悪寒が走り、自己嫌悪に歯を噛み締める。
「ちょーっとばかり付き合ってくれるか? くれるよな? 下界じゃ馬鹿どもが飲み騒ぐ土曜の夜に、シャレにならねえ仕事を押し付けられて血管破裂しそうなんだよ」
あたかも可哀そうな俺をアピールするような潤んだ目と、相反して悪い笑みをたたえた口元。
見るに堪えないとはこのことだ。
アラスターはうんざりと眉を歪めたまま、壁から背中を離した。
つまりこの男は今から自分を連れて空を飛ぶということだ。
行先だけ伝えてくれれば、こちらも好きに移動できるというのに。
「なあ、来るだろ?」
わざわざ同意を確認するのも意地が悪い。
逆らえぬ相手の頭に足を乗せるのが好きな男らしい脅し。
「ええ、もちろん。どこへでも」
なんなりと、まで付け加える前に黄金の光に包まれたかと思うと、数秒で上空に浮かび上がっていた。
長い足をぴたりと揃えて、大仰にため息を吐く。
手にしたマイクを半円を描くように背中に回し、望まぬ来訪に備えて路地の壁にもたれかかる。
足元から蠢いた影が臨戦態勢に入るのをつま先でなだめる。
翼の持ち主はもったいつけるように緩慢な動作で目の前に降りてきた。
「よお、バンビちゃん」
礼節の一つもないその挨拶に、張り付けた笑顔も崩れそうになる。
「あー? なんで返事が聞こえねえんだ。ラジオデーモン様?」
「聞こえてますよ、相変わらず聞くに堪えない声だ」
何か言葉が返ってくればそれで満足とでもいうように、目の前の傲慢な男はにんまりと微笑んだ。それから、大きな体を威嚇するようにさらに大きく腕を広げる。
その右手に握られた金色の武器にぞくりと背筋に悪寒が走り、自己嫌悪に歯を噛み締める。
「ちょーっとばかり付き合ってくれるか? くれるよな? 下界じゃ馬鹿どもが飲み騒ぐ土曜の夜に、シャレにならねえ仕事を押し付けられて血管破裂しそうなんだよ」
あたかも可哀そうな俺をアピールするような潤んだ目と、相反して悪い笑みをたたえた口元。
見るに堪えないとはこのことだ。
アラスターはうんざりと眉を歪めたまま、壁から背中を離した。
つまりこの男は今から自分を連れて空を飛ぶということだ。
行先だけ伝えてくれれば、こちらも好きに移動できるというのに。
「なあ、来るだろ?」
わざわざ同意を確認するのも意地が悪い。
逆らえぬ相手の頭に足を乗せるのが好きな男らしい脅し。
「ええ、もちろん。どこへでも」
なんなりと、まで付け加える前に黄金の光に包まれたかと思うと、数秒で上空に浮かび上がっていた。