ハズビンBL ルシアダ/アダアラ
第2章 【R18アダアラ※流血あり】悦びに落ちる鼓膜
気を失う直前に目的地に下ろされ、喜び勇んで湧き出る影に踵を埋める。
「仕事片付けたらまた来るぜ」
ぽん、と投げられたマイクを指先でキャッチする。
「予告など期待してませんよ。ストレスが少ないことを願います」
毎回血まみれにされては迷惑だ。
「善処してやるよ」
アダムは中指を立てて愉快気に振った。
それから妙に顔を引き締めると、身を屈めて耳元で囁いた。
「お前さ、あえいでる時すっげえ幸せそうだぞ。自分の声、好きで堪んねえだろ」
ぴくん、と耳の先に力がこもる。
返事は期待してないようにアダムは身を起こし、マスクをつけた。
口角が震えるのを押さえながら口を開く。
「下品な解釈は、やめていただきたい」
こん、とマイクのスティックの先を地面に突き立て、背筋を伸ばす。
アダムはその立ち姿を心底愛しそうに微笑んで眺めた。
ずたずたに裂けた上着でもなお、紳士的な空気を纏うのがお得意で。
「さっさと傷治せよ。すべすべな腹が好みなんだ」
「……どの口が言う」
「じゃあなー」
金色の粒子を舞わせて飛び去る。
キラキラと輝くそれは、すぐに地獄の風に巻かれて散った。
深く呼吸を繰り返してから、ゆっくりと耳に触れる。
赤い毛を引きちぎるようにぎゅっと握りしめる。
「まさか……そんなわけ、ないでしょう」
自分に言い聞かせる低い声は、路地の向こうの地獄の住人達には届かない。
出番を待ちわびた影たちが足を引っ張ってくる。
身を委ねてアラスターは地面に沈んだ。
誰もいなくなった路地に、輝く羽が数枚舞い降りた。
「仕事片付けたらまた来るぜ」
ぽん、と投げられたマイクを指先でキャッチする。
「予告など期待してませんよ。ストレスが少ないことを願います」
毎回血まみれにされては迷惑だ。
「善処してやるよ」
アダムは中指を立てて愉快気に振った。
それから妙に顔を引き締めると、身を屈めて耳元で囁いた。
「お前さ、あえいでる時すっげえ幸せそうだぞ。自分の声、好きで堪んねえだろ」
ぴくん、と耳の先に力がこもる。
返事は期待してないようにアダムは身を起こし、マスクをつけた。
口角が震えるのを押さえながら口を開く。
「下品な解釈は、やめていただきたい」
こん、とマイクのスティックの先を地面に突き立て、背筋を伸ばす。
アダムはその立ち姿を心底愛しそうに微笑んで眺めた。
ずたずたに裂けた上着でもなお、紳士的な空気を纏うのがお得意で。
「さっさと傷治せよ。すべすべな腹が好みなんだ」
「……どの口が言う」
「じゃあなー」
金色の粒子を舞わせて飛び去る。
キラキラと輝くそれは、すぐに地獄の風に巻かれて散った。
深く呼吸を繰り返してから、ゆっくりと耳に触れる。
赤い毛を引きちぎるようにぎゅっと握りしめる。
「まさか……そんなわけ、ないでしょう」
自分に言い聞かせる低い声は、路地の向こうの地獄の住人達には届かない。
出番を待ちわびた影たちが足を引っ張ってくる。
身を委ねてアラスターは地面に沈んだ。
誰もいなくなった路地に、輝く羽が数枚舞い降りた。