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ハズビンBL ルシアダ/アダアラ

第2章 【R18アダアラ※流血あり】悦びに落ちる鼓膜


 行為が終わったのは血が乾き、ぼろぼろと赤い破片となって落ち始めた頃だ。
 すでに外は鈍い光が地平線から滲み始め、全身の痛みがどれほど長い時間だったか物語る。
「クソあちぃ。ハナから脱いでヤりゃよかった」
 大仰な衣装のアダムが組んだ手に頭を乗せて仰向けになる。
 ぶらぶらとベッドからはみ出た足を揺らし、ベッド全体を不快に軋ませる。
「……傷をつけるのは、ほどほどにして欲しいのですが」
「あー? 素直に従わねえお前が悪いだろ」
「私も地獄に来て長いので、流石に男の膝に座るのはご遠慮したいですね」
「優しくキスでもしてやろうと思ったのに」
「御冗談でしょう」
「半分な」
 つかみどころのない返答に、ただシーツを引き寄せて体を暖める。
 前回の傷跡も癒えないうちに、この"悪魔"はやってくるのだ。
 気まぐれに。
 唐突に。
 絶対的な力と共に。
「戻りたくねえなあ……」
 仕事の難儀に対してか、第二ラウンドを望んでの言葉かは判断つかない。
 頭上の光る輪っかを憎らしく見つめて、アダムは身を起こした。
「ステーキ食うの忘れてた」
「はい?」
「どおりで腹が減ってるわけだ。おい、行くぞ」
 何を、と言い終わらぬうちに抱えられ、朝の淀んだ冷たい空気の層を上に、上にと飛び上がる。
 直角に進路を変えて、加速しながら街に向かう。
 ぎゅっと抱かれた体は既に脱力し、眠気に浸っている。

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