ハズビンBL ルシアダ/アダアラ
第1章 ルシアダがチェスを興じて楽しく会話するだけ
カチン、と小気味よい音を立ててガラスのルークが盤面を移動する。
「古い手だな、アダム」
愉快そうな赤い瞳に舌打ちを漏らしつつ、そのままルシファーのポーンを倒す。盤外に出たそれを黒い指先が弾いてこちらに転がした。次の手を考えるように手首の袖先をいじりながら、地獄の王は薄く歯をのぞかせて微笑んでいる。
これはただの王の暇つぶしだ。
天から堕ちた愚かな人間を、慈悲深く庭の中で迎えてやるだけの。
わずかな暇つぶしだ。