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灰色ノ世界

第1章 灰色ノ世界

「尊(みこと)、こっちだ! 走れ!」


 人混みの中から、僕は多々良の姿を見つけた。


 多々良の金髪が……多々良の全身が金色に光っている。


 "俺はここにいる"
 "俺を目指して進めばいい"


 走り出す多々良の背中がそう言っているような気がした。


「多々良っ……待って!」
 
 
 僕は多々良を追いかける。だけど走っても走っても、多々良に追いつけなくて、金色の眩しい光は遠のいていった。


 だめだ……
 また灰色の世界に飲み込まれる。


 そう思った時、ドンッ!と大きな音が頭上から響いた。


「……っ!」


 上を向くと、大きな花が夜空にパッと咲いたところだった。


「あっ――」


 僕はその大きな花に目を奪われる。


 灰色じゃない、色とりどりのきれいな光がキラキラと落ちてきた。

 
 今まで見てきた中で一番きれいな花火だ。




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