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お題小説 カレイドスコープ

第1章 kaleidoscope

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 俺と茉優はそんなたどたどしい会話をしながら…
 いつの間にかにあの『神社』の社の裏に鎮座する御神木の『大銀杏』の下のベンチに並んで座っていた。

 それはまるで神様に導かれたかの様に…
 本当にいつの間にかに座っていたのである。

「ただ勇人は上司の巻き添えを食らっただけで、連帯責任を負わされただけなんでしょう?」

「うん、そう…」
 それは、その茉優の言葉は本当にその通りであり、まるで誰か関係者にその事実を聞いたかの様であったのだ。

「なぜ?」
 思わず、問うてしまう。

 なぜ、そこまで知っているのか?と
「もぉ、すっかり間抜けになっちゃったみたいねぇ」
 すると茉優は笑みを浮かべながら、そして少し呆れ気味に言ってくる。

「ねぇ勇人、わたしん家の稼業は何だったっけぇ?」

「あっ」

 そうであった、茉優の家の稼業は…

「そ、そうだった…む、村上建設だ…」

「はい、そうですよ、ようやく思い出したのぉ」

 そう村上建設、村上グループ…
 この田舎町だけではなくて、この県内でも有数な建設会社の一つであり、そのグループ関連には資材会社や産廃関連会社等々、複数の経営をしている。

 そして茉優の祖父が会長、父親が社長、そして市会議員でもあった…
 だから茉優はそのコネで市役所職員となり…
 つまり茉優はお嬢様でもあるのだ。

「だからたまたまなんだけどね、そんな関係でね聞いちゃったのよ…
 ましてや勇人のいたゼネコンの下請け専門でもあるからね」

「あっ…」

 そうだったのだ…
 茉優の家の村上建設は俺がいたゼネコンの下請け専門でもあったのである。

「もぉ、そんな事も忘れちゃってぇ」
 茉優は少し呆れ気味に呟いてきた。

 そう…

 俺はそんな事も忘れてしまったくらいに、あの事件に巻き込まれたせいですっかり人生を、生き方を変えられてしまい…
 そのせいですっかり将来を見失い、無気力に墜ちてしまっていたのである。

「だからぁ、その噂を、最初は噂だったのね…
 それを聞いた時からずうっと心配で、気になって、調べたのよ」

「そうだったのか…」

「だけど、だけどね…」

 すると今度は少し目を潤ませて…

「もう何年も、そう10年以上も会っていない、ましてやわたしなんかが口出しできる様な問題じゃないしね…
 どうにも出来なかったのよ」



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