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お題小説 カレイドスコープ

第1章 kaleidoscope

 17

 この過去からの愛しい存在感の茉優との再びの熱い想いに、心に火が…
 火が点いたみたい。


 そしてさっきの突然の再会に違和感は全く無かった、いや、あの頃から今日までの空白の18年間の…
 想いのズレ、心の違和感等は全く無い。

 いいやむしろ、また、あの頃の、あの時の、あの刻の…
 あの想いの昂ぶりに火が点いてしまったみたいであった。

「ふうぅ…」

 俺は余りにも突然な、予想外の、いや、予想だにしなかったこの急展開に…
 思わず上を向いて、そんな吐息を漏らす。

 そしてその頭上には、あの頃、あの昔から変わらぬ樹齢500年以上の御神木である『大銀杏』が空に、夜空に、いや、宇宙(そら)にむかって大きく沢山の枝葉を伸ばして鎮座をし…
 俺と茉優の2人をまるで懐に抱え、見守ってくれているかの様に見下ろしていた。

「え?」
 そんな俺の吐息に茉優が疑問の声を漏らす。

「あ、ごめん、違うよ、変な意味のため息じゃないよ…」
 と、さっきの吐息の言い訳をする。

「うーん、そう、そうだなぁ…
 予想だにしない、そして余りにも急展開な嬉しい驚きの吐息といえるかなぁ」

「え、そ、そうなの?」

「うん、そうだよ、そうさ…」

「あ、まあ、急展開なことはわたしもそうだけど…
 ううん違うのよ、言わずにはいられなかったのよ…」

「え、言わずにって?」
 
「だってぇ…
 勇人はいったい何年振りに、ううん、いつ以来振りに帰ってきたと思ってるのよぉ?」

「あ、う、うん、そ、それは、あ、約10年振り…だけど…」

「え、違うわよ、わたしの顔を見たのは何年振りなの?」

「あ、それは、成人式以来だから、18年振り…か」

「でしょう、だから、わたしには今夜のワンチャンしか無かったから…
 だから、だから…こんな…急にしか…」
 茉優は昂ぶりに込み上げてきた感じで慟哭する。

「わ、ワンチャン?」

「そうよワンチャン…わたしには今夜が、あ、いや…」

 そして茉優は話しを続けた…


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