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お題小説 カレイドスコープ

第1章 kaleidoscope

18

 茉優は話しを続けてくる…

「あ、あのね…………」

 ………あのね、おばあちゃんが亡くなったのを訊いてね、勇人が帰ってくるとは思っていたのよ。
 あ、いや、ううん、絶対に帰ってくるだろうってね。

 だからわたしは、明日のお通夜には必ず伺って勇人に会いたい、いや、なにがなんでも会うんだって、会ってお話しをするんだって考えてはいたのね。

 だけど、うん、そう、本当に今夜が、今夜のあの集まりの再会が想定外だったのよ。
 まさか勇人が来るとは思ってもいなかったし、知らなかったのよ。

 ただ、直前に弘美からラインで知らされたけど、それにはちょっと勇気がいったわ………

「勇気って?」
 俺は聞き返す。

「えー、だってぇ、ホント18年振りの再会なのよぉ…
 果たして勇人がどんな感じになっているのか?
 そして………」
 
 ……そして、勇人が果たしてわたしの事をどんな目で見てくるのだろうか?ってさぁ…

「あ、う、うん」
 返す言葉がなかった。

 なぜなら、茉優の言いたい事がよく分かるから…

「ほら、わたしは今まで、わたしなりの今現在の勇人を勝手にイメージしていた訳じゃない?
 だから勇人だって少なくともわたしを見て、ううん、わたしの老け方を見てさぁ…」

 ……その予想のイメージとは掛けは無された印象だったらガッカリしちゃうかもしれない訳だしさぁ、それが、その、勇気よ…

「う、うん」
 その茉優の言う事は本当によく分かる。

「それにね、もしも仮にね、わたしが今夜の勇人を見てガッカリしちゃったらさぁ…」

 ……わたしの今までの想いや希望の思いの全部がさぁ、無駄に、ダメになっちゃうってことだからさぁ…

「だから、お店に入る前までは本当にドキドキ、バクバク緊張していたのよ」
「うん、そうか、それで?」

「え、もぉ、バカ、馬鹿、ガッカリなんてしてないわよぉ…」

 ……じゃなかったらぁ、今、ここにいないし、こんなお話しなんかもする訳がないでしょう…

「あ、そ、そうかぁ…」
「そうよ、当たり前よぉ…逆にぃ、少しワクワクしたわ」
「え、ワクワクって?」

「え、もぉバカ、だからぁワクワクよぉ、ワクワク…
 思ってたより、ううん違うわ、全然昔とは変わってなかったわよ」

 ……予想以上だったわよ…
 と、そんな嬉しい言葉を言ってくれた。



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