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俊光と菜子の、ホントはどうでもいい番外編

第2章 その1

 *

「ありがとうございましたー!」


 ショップのレジで、お洋服が入った紙袋を、店員さんから受け取った。

 ふんふんふーん。俊光君に、お買い物を選んでもらっちゃったー。

 私、お兄ちゃんの俊光君を、勝手に彼氏の練習台にしてるけど……実際こうしてみると、俊光君のホントの『彼女』になっちゃったみたいだよぉ。えへへ、なんてね。やだなぁ私ったら。お兄ちゃん相手にそんなこと考えちゃうなんて。

 ルンルン&デレデレしながら、お店の外で待っている俊光君の元へ。

 ……んん? 誰か、俊光君に話しかけてる。


「あのぉ、お暇ですかぁ?」

「良かったら、私達と一緒にカフェ行きましょうよー」

「えっ!? いやっ、俺はっ⋯⋯」


 なっなっなっ……俊光君がっ、きゃぴきゃぴの女のコ達にナンパされてるぅー!

 いやぁ、取っちゃダメー! 俊光君は、私のなのー!

 急いで俊光君に掛け寄り、腕にガッツリしがみつく。


「俊光君、お待たせーっ!」

「わっ、菜子っ!?」

「こんな人達は置いといて、早く行こーっ!」

「え、あぁ……」


 ポカンとするキャピキャピ二人組に向かって、トドメのあっかんべぇーをしてやった。

 あーよかった。俊光君を守れたよ。

 けど、ホッと安心したのも束の間ってヤツで――


「ねぇ、食事でもどお? 私、お金持ってるから、奢るわよ」

「今はお腹いっぱいですっ!」


 年上のOL風のお姉さんが来たり、


「んまぁー、どストライクイケメーン♪ 可愛がってあげるから、うちのバーにいらっしゃいよぉー」

「いらっしゃんないっ!」


 ゴリッゴリのオカマさんが来たり、


「アナタハ神ヲ、信ジマスカー?」

「信じませんっ!」


 宗教の勧誘まで来ちゃったりして。

 気づけば私は必死になって、俊光君を魔の手から守り続けていた。

 わぁーんっ、俊光君モテすぎー! これじゃあ私、『彼女』というより、『ボディガード』だよぉーっ。


「お前、さっきから忙しそうだな」

「誰のせいだと思ってるのよぉ!」


―おわり―

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