
俊光と菜子の、ホントはどうでもいい番外編
第3章 その2
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俺は、無事に高校合格した菜子に、何かささやかな物ををあげたくて、親友の智樹と女性向けの店に来た。
「おっ、これなんかどうだ。JKになるんだから大人っぽいのもいいだろ?」
智樹は、純白のバラのモチーフがついたヘアクリップを手に取った。
「あーいいかも。だけど……これとかもいいな」
俺が目についたのは、小さなピンクのリボンに、四角いビジューがちょこんとついたヘアピン。
これを、あの無邪気な菜子がしたら…………うん。すげー可愛いかも。
「コラ、俊光よ。オレを置いて妄想に浸るな」
「いっ!? べ、別に俺はっ……」
恨めしそうに目を細めてツッコむ智樹のセリフに、顔がカッと熱くなる。智樹のヤツ、俺の反応を見て、また面白そうに笑ってるし。
「だけどまぁ……そっちの方が、あのラブリーな菜子ちゃんには合いそうだし、喜びそう。なんせ、俊光お兄様が選んだのだからな」
「だと、いいけど」
買い物はあんまり好きじゃないけど、菜子のための買い物なら……好きだな。
「俊光。ちょっとそれ貸して」
「は? 何で?」
「いいからいいから」
何やらワクワクする智樹が、ヘアピンを手にすると、自分の髪に近づけ体をくねらせ始めた。え、何コイツ。
「んふ。俊光くぅん、菜子だよー。このヘアピン、似合う? えへへー」
「うっげっ! やめろ、エグいっ!」
どこが菜子だ! 俺より背の高い野郎が何してくれてんだ!
「ひっどぉーい。可愛い妹にエグいなんて、菜子泣いちゃうっ」
とかいって、シクシクと泣く素振りまでしだすし。
「ぷーんだ。俊光君なんてキライ。菜子、おこだぞ」
「だから、やめろって!」
智樹の気持ち悪いモノマネに対処していると、ふと、複数の視線を感じた。見渡すと、
「ねぇ、あの学生っぽい二人、ヤバくない?」
「二人ともかなりイケメンなのに、何か残念」
「やっだぁー、リアルBLじゃん! 鬼萌えー!」
「絶対さぁ、塩顔のコが攻めで、美形のコが受けだよねー」
女性客や従業員のほとんどが、俺と智樹に注目し、冷めた目で見ていたり、キャアキャアと面白がっていたりしている。
どうやら俺達は、周りにあらぬ誤解を与えているようだ。
もう二度と、この店には来れねぇな。
―おわり―
