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俊光と菜子の、ホントはどうでもいい番外編

第3章 その2


 *

 俺は、無事に高校合格した菜子に、何かささやかな物ををあげたくて、親友の智樹と女性向けの店に来た。


「おっ、これなんかどうだ。JKになるんだから大人っぽいのもいいだろ?」


 智樹は、純白のバラのモチーフがついたヘアクリップを手に取った。


「あーいいかも。だけど……これとかもいいな」


 俺が目についたのは、小さなピンクのリボンに、四角いビジューがちょこんとついたヘアピン。

 これを、あの無邪気な菜子がしたら…………うん。すげー可愛いかも。


「コラ、俊光よ。オレを置いて妄想に浸るな」

「いっ!? べ、別に俺はっ……」


 恨めしそうに目を細めてツッコむ智樹のセリフに、顔がカッと熱くなる。智樹のヤツ、俺の反応を見て、また面白そうに笑ってるし。


「だけどまぁ……そっちの方が、あのラブリーな菜子ちゃんには合いそうだし、喜びそう。なんせ、俊光お兄様が選んだのだからな」

「だと、いいけど」


 買い物はあんまり好きじゃないけど、菜子のための買い物なら……好きだな。


「俊光。ちょっとそれ貸して」

「は? 何で?」

「いいからいいから」


 何やらワクワクする智樹が、ヘアピンを手にすると、自分の髪に近づけ体をくねらせ始めた。え、何コイツ。


「んふ。俊光くぅん、菜子だよー。このヘアピン、似合う? えへへー」

「うっげっ! やめろ、エグいっ!」


 どこが菜子だ! 俺より背の高い野郎が何してくれてんだ!


「ひっどぉーい。可愛い妹にエグいなんて、菜子泣いちゃうっ」


 とかいって、シクシクと泣く素振りまでしだすし。


「ぷーんだ。俊光君なんてキライ。菜子、おこだぞ」

「だから、やめろって!」


 智樹の気持ち悪いモノマネに対処していると、ふと、複数の視線を感じた。見渡すと、


「ねぇ、あの学生っぽい二人、ヤバくない?」

「二人ともかなりイケメンなのに、何か残念」

「やっだぁー、リアルBLじゃん! 鬼萌えー!」

「絶対さぁ、塩顔のコが攻めで、美形のコが受けだよねー」


 女性客や従業員のほとんどが、俺と智樹に注目し、冷めた目で見ていたり、キャアキャアと面白がっていたりしている。

 どうやら俺達は、周りにあらぬ誤解を与えているようだ。

 もう二度と、この店には来れねぇな。



―おわり―

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