Kalraの怪談
第1章 一夜目:スキマ
【スキマ】
Y県R市に、「絶対に写真を撮ってはいけない」という場所がある。
それは、経営難のために廃業し、随分前から廃墟になったホテルだった。その不気味な雰囲気から、いつしか、近所でも有名な心霊スポットとなっていた。
写真についての噂がいつから出たのかは分からないが、いつのまにやらまことしやかにそう言われるようになっていた。
大学生3人組(仮にA、B、Cとしておこう)が、そこに肝試しに行こうということになり、3人で夕暮れ時にその廃墟に向かった。
ついた頃には日はほぼ沈み、夕闇に染まった不気味な廃墟は3人の期待を高めた。
A、B、Cは廃墟の入り口から中に入る。おそらくは鎖がかけられていたのだろうが、すでにそれは誰かの手によって壊されていた。
中は荒れ果てており、時折小動物が走り回る気配があったり、虫が飛び交うことがあり、「気持ち悪い」ということはあるものの、取り立てて、異常な現象は見られなかった。
部屋一つひとつを回るほどの面白さはないと思い、3人は帰ることにした。
帰り際、フロントの前で、Bが言った。
「ここって、絶対に写真を撮っちゃいけない、って言われているんだぜ?」
「なんで?」とC。
「俺も聞いたことある。心霊写真とか撮れるんじゃねえ?」
Aは笑って続けた。
Aが当時ではまだ普及しきっていなかったスマートフォンを取り出すと、フロントの机の上に立てかけた。
「これで写真取ろうぜ。一応フラッシュつくんだ」
タイマーをセットして、3人並んだ写真を3枚撮った。
「あとでメールで送るから」
その日の肝試しはそんなふうに終わった。
数日後、AからメールでBとCに写真が送られてきた。Bはスマホを持っていたが、Cはまだ当時は主流に近かったガラケーであり、Aが送ってきた写真をうまく受信できなかった。あとで、パソコンにでも送信し直してもらおうか、と思いながらいたが、大学での専攻も違うAとは会えずにいて、言いそびれていた。
そうこうしている内にAから「あの時の写真、見るなよ!」とメールが来た。そういえば、Aの姿を全く見ないのもオカシイ。CはAに「どうしたんだ?」とメールを何度かしてみたが、その返事はなかった。妙な胸騒ぎがしたCはAの家まで尋ねていった。チャイムを鳴らすとAが出てきたが、その顔にびっくりした。
Y県R市に、「絶対に写真を撮ってはいけない」という場所がある。
それは、経営難のために廃業し、随分前から廃墟になったホテルだった。その不気味な雰囲気から、いつしか、近所でも有名な心霊スポットとなっていた。
写真についての噂がいつから出たのかは分からないが、いつのまにやらまことしやかにそう言われるようになっていた。
大学生3人組(仮にA、B、Cとしておこう)が、そこに肝試しに行こうということになり、3人で夕暮れ時にその廃墟に向かった。
ついた頃には日はほぼ沈み、夕闇に染まった不気味な廃墟は3人の期待を高めた。
A、B、Cは廃墟の入り口から中に入る。おそらくは鎖がかけられていたのだろうが、すでにそれは誰かの手によって壊されていた。
中は荒れ果てており、時折小動物が走り回る気配があったり、虫が飛び交うことがあり、「気持ち悪い」ということはあるものの、取り立てて、異常な現象は見られなかった。
部屋一つひとつを回るほどの面白さはないと思い、3人は帰ることにした。
帰り際、フロントの前で、Bが言った。
「ここって、絶対に写真を撮っちゃいけない、って言われているんだぜ?」
「なんで?」とC。
「俺も聞いたことある。心霊写真とか撮れるんじゃねえ?」
Aは笑って続けた。
Aが当時ではまだ普及しきっていなかったスマートフォンを取り出すと、フロントの机の上に立てかけた。
「これで写真取ろうぜ。一応フラッシュつくんだ」
タイマーをセットして、3人並んだ写真を3枚撮った。
「あとでメールで送るから」
その日の肝試しはそんなふうに終わった。
数日後、AからメールでBとCに写真が送られてきた。Bはスマホを持っていたが、Cはまだ当時は主流に近かったガラケーであり、Aが送ってきた写真をうまく受信できなかった。あとで、パソコンにでも送信し直してもらおうか、と思いながらいたが、大学での専攻も違うAとは会えずにいて、言いそびれていた。
そうこうしている内にAから「あの時の写真、見るなよ!」とメールが来た。そういえば、Aの姿を全く見ないのもオカシイ。CはAに「どうしたんだ?」とメールを何度かしてみたが、その返事はなかった。妙な胸騒ぎがしたCはAの家まで尋ねていった。チャイムを鳴らすとAが出てきたが、その顔にびっくりした。