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Kalraの怪談

第31章 三十一夜目:自殺の名所

俺がおっかなびっくりして柵に近づこうとしないでいる中、AとB子は柵越しに下を覗き見ている。そして俺にスマホで記念写真を撮って欲しいと言ってきたのだった。

再び、「何故、俺がこんなところでカップルの記念写真を撮らねばならないんだ」という思いがこみあげてきたが、そこは彼女がいないことを僻んでいると思われたくもないので、ぐっとこらえ、彼らのスマホで1枚ずつ、俺のスマホでも念のため(何の念だか知らんが)一枚撮った。

まあ、写真を撮ったらこんなところ、特に他に見るものもない。俺は柵を手で揺すったりして造作を確かめたりしていたがすぐに飽きてしまった。

そんな時、急にB子が小さな悲鳴を上げた。どうしたどうしたとAが駆け寄るが、B子は辺りをキョロキョロ見回し挙動がおかしいものの何も言わない。それで、早く帰ろうと突然言い出した。

なんだろう?トイレか?と思い、俺たちは早々にその場を引き上げることにした。帰りの車の中、ひとりだけ機嫌よくビールを飲んでいるAとは裏腹に若干B子が沈みがちなのが気になったが、それ以外、特に何がある訳ではなかった。

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