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Kalraの怪談

第33章 三十三夜目:首切り服

その時、カタカタと音がしたのです。番の人が何かをしているのか、と思い、不審に思って祖母がそっと覗くと、番の人はトイレにでも行ったのかおりませんでした。その代わり、曾祖母の棺桶の上で何かが蠢いているのが見えました。その影は曾祖母の入れられている棺桶を開けようとしているようにも見えました。祖母は恐ろしさのあまり動けなかったといいます。全身が震えたせいで戸がかすかに音を立てました。

その音を聞きつけてか、曾祖母の棺桶の上の影がゆっくりと祖母の方に向き直り、立ち上がりました。

ロウソクの明かりに照らし出されたそれは、日本髪を結った女性のようでした。しかも、着ているのはあの着物です。紫の鮮やかな着物を着た見知らぬ女性が曾祖母の収められている棺桶の上に立ち、祖母の方を向いて大口開けて笑ったというのです。笑ったといっても、声は一切聞こえません。ただ、狂ったように笑う仕草だけが祖母の目に焼き付いたといいます。そして、それは不意に消えました。

しばらくしてやっと動けるようになった祖母が棺桶に恐る恐る近づいても、人は愚か、着物もそこにはありませんでした。

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