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Kalraの怪談

第33章 三十三夜目:首切り服

☆☆☆
祖母が語った話はとても信じられるものではありませんでした。確かに、母も伯母も、曾祖母や曾曾祖母が若くして亡くなったことは聞かされていましたが、今回のことは初めて聞いたと言います。結局、祖母の認知症が進んで、テレビで見た話が実生活に混同されたのだろうと、そういう結論に達しました。

その後、祖母は断続的に興奮したり、夜中に幻覚を見て暴れるようになってしまったため、そのまましばらく入院することになってしまったのです。大好きだった祖母のあまりにも急な変化にショックを受けていた私ですが、その数日後、更にショックな光景を目の当たりにすることになったのです。

なんと、伯母が件の着物を身につけていたのです。
「どう?」
母に着付けをしてもらった伯母は、くるりと一回転して私に着物を見せました。
「どうして・・・」
祖母のあの話を聞いていながら、伯母がなぜ着物を着ようとしたのか、私にわかりませんでした。普段から着物を着るような人ではありません。むしろ、一度も着物を着ているところなんか見たことがないのに、よりによってあの着物を着ていたのです。

その日を境に、伯母は何かというとその着物を身につけて出かけるようになりました。自分で着付けができない伯母は、着付けができる母にいつも頼みに来ましたので、私はいつもその光景を見ていました。

その着物を着ているときの伯母は何となくいつもと違いました。いつもより化粧が濃く、口数も多くなっていました。ものすごく機嫌がよく、私におもちゃを買ってくれたりするのです。そして、特に必要がないのに、高級なレストランで一人食事をしたり、デパートで買い物をしたりするのです。

「だって、いい着物を着ていると、いいところに行きたくなるでしょう?」
そう、伯母は言っていました。

そんな伯母の姿を見ながら、私はずっと嫌な感じがしていました。そして、ついにその予感が当たる日が来てしまいました。

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