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Kalraの怪談

第34章 三十四夜目:現代風の呪い

☆☆☆
「最初は単なる自殺、という話だったんだけどなー」

都内のB区の1Kのアパートで40代後半の男性が遺体で発見された。ご遺体の第一発見者は、異臭がするという通報を受けて現場に駆けつけた若い警察官だった。

所轄署の捜査により、男の名前はT.Y、死因は腹部を包丁で刺されたことによる失血死だという事まではすぐに分かった。発見時、すでに死後1週間から10日くらいは経っていた。部屋は内側から鍵がかかり、凶器と思われる包丁からは、Y自身の指紋が逆手に握るようについていたことから、自分で自分の腹を刺して自殺したものと思われた。

「その年は梅雨明けが早く、7月に入ったばかりだったけど、すでに暑い日が続いて、ご遺体の腐敗の程度もひどかったんだ。それで臭いが漏れて通報につながったんだな。そうでもなければ、身寄りのないYのご遺体はもうしばらく発見されなかったかもしれない。」

そう、Yには身寄りがなかった。もとは、妻と二人の男の子供がいたのだが、長男が中学1年生のときに自殺したのをきっかけに、妻とは離婚してしまったという。Yの両親も既に鬼籍に入っており、Yは天涯孤独であった。

「なんで、こんな痛そうな死に方をしたのかと最初は不思議に思ったもんだった。でも、捜査するうちに、その背後の因縁が見えてきたんだ」

Yの息子Mは中学校でいじめにあっていたようだった。それを苦に、Yの死のちょうど2年前、放課後の誰もいない学校の自分の教室で自殺をした。その時の手段もナイフで自分の腹を刺すというものだったのだ。

「この自殺事件は、当時ちょっとした話題になったんだ。ただ死んだんじゃなかったからね。Mは自分が死ぬ間際にTwitter(現:X)にいくつか投稿をしたんだ。」

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