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Kalraの怪談

第34章 三十四夜目:現代風の呪い

「Rは父親の転勤を表向きの理由に、Y県に引っ越していた。けれども、引っ越しをした先にもすぐに噂が広まったらしい。例のTwitterの投稿も転校先の生徒たちが次々とリツイートしていたようだ。」

なにせフルネームが記載されており、例の腹にナイフが刺さっている画像までセットで広まったのだ。Rの家に無言電話がかかってきたり、『人殺し、出ていけ!』などという中傷ビラが貼られるようになるまでにそう時間はかからなかった。父親の転勤先の会社の社員も例の投稿を目にするようになり、Rの父親も仕事をやめざるを得なくなった。

「追い詰められたんだろうな。結局、引っ越しをしてから半年もせずにRは自室で縊死してしまったそうだ」

二人目のGは、O県に引っ越した。父親は会計士で、今までの勤め先を辞めて、O県の県庁所在地で新しく会計事務所を立ち上げ、独立した。心機一転頑張る、という気持ちの現われだったのだろう。
ところが、やはり、ここでも例のツイートが広まり始めてしまった。特に、このGの名字は珍しいものだったので、Gの父親の会計事務所の顧客からも『もしかして』などと話題が出たり、家の表札の下にいたずら書きをされたりした。もちろん、G自身の転校先でも噂になってしまい、Gは引越し後、程なくして不登校になり、家に引きこもるようになってしまった。

「引きこもったGは毎日母親や父親に暴力を振るうようになったようだった。ときには包丁を持ち出す事もあったという。」

こんな事態になって、一番最初に音を上げたのは母親だった。離婚届に自分のサインだけを残して家を出てしまった。「G」という名字を名乗るのに耐えられなくなってしまったのだ。母親が出ていってから後、更にGの家庭内暴力は激しさを増していった。父親は大層困ったようだった。

その上、Gの父親の会計事務所には顧客が寄り付かず、程なくして倒産することになった。こうして、Gと父親は路頭に迷うことになった。

「最後には、父親がGを殺し、無理心中を図ったんだ。これが大体Yの自殺の1年ほど前だった」

父親は死にきれずに生き残り、服役したという。おそらく現在も服役中だろうとAさんは言った。

「Mが書き残したツイートはまさに『呪い』だった。どこまでも追いかけて二人の少年の命を奪う結果になったんだからな・・・」

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