
Kalraの怪談
第36章 三十六夜目:鬼送り
☆☆☆
「これがいじめの正体だったんだ。みんなで、この気味悪い遊びをやっていたんだ。でも、この話をT子から聞いて以来、そのいじめはピタッと止んだの」
なんにせよ、いじめがやんでよかったね、と私は言った。
鬼に追いかけられて階段から落ちたSさんという児童は本当にいるのだそうだ。1ヶ月位前に階段から落ちて、足の骨を折ってしまい、今でも松葉杖をついているという。
「そろそろ出よう」
A子が言った。確かに、9時を回っている。明日はお互いに仕事だ。まだ週の半ばも過ぎていないのに、これ以上遅くなるわけにはいかない。
一緒に飲んでいたバーから駅までの道は人通りが少ない暗い道だった。傍らに小さい公園がある。まだ、駅まではもう少し距離がある。
道すがら、他愛のないおしゃべりをしながら歩いていた。
私はふと気になったことを聞いてみた。
そういえば、鬼って、どうやって人につけるの?
A子はふふっと笑みを漏らした。
「昨日はこんな道、歩けなかったよ。怖くて」
確かに、女一人では怖いだろう。
「T子からあの話を聞いたのは、先週の土曜日だった。今日は木曜日。ギリギリだった」
え?
私はA子を見た。
街灯の下に立つA子の口が薄っすらと笑みを浮かべる。前髪が影を作り、どんな目をしているかよく見えない。
「月曜日の夜、フィットネスクラブの帰り道、マンションの前に差し掛かったとき、足元に大きな影が見えた。あんまり大きな影だったから、びっくりして振り返ったけど、誰もいなかった。ただ街灯が光っているだけだった。」
「火曜日、部屋で寝ていたら、夜中に、低いくぐもった吠え声のような声が聞こえた。」
「水曜日、学校帰り。テストの採点で遅くなったんだけど、学校から出たところで、後ろから何かがついてくる。慌てて走って、人通りが多いところに行ったけど、後ろからじっと見られている感じがあって、その後はタクシーで家まで帰ったわ」
「T子は私に鬼をつけていった。だから、土曜日が1日目、日曜日が2日目、月曜日で3日目。」
「T子と話したとき、私もあなたと同じことを気にしたの。いったいどうやって鬼をつけるんだろうって。でもそのときは聞かなかった。」
「水曜日に、T子を問い詰めた。なかなか話してくれなかったけど、最後にやっと教えてくれわ。」
「これがいじめの正体だったんだ。みんなで、この気味悪い遊びをやっていたんだ。でも、この話をT子から聞いて以来、そのいじめはピタッと止んだの」
なんにせよ、いじめがやんでよかったね、と私は言った。
鬼に追いかけられて階段から落ちたSさんという児童は本当にいるのだそうだ。1ヶ月位前に階段から落ちて、足の骨を折ってしまい、今でも松葉杖をついているという。
「そろそろ出よう」
A子が言った。確かに、9時を回っている。明日はお互いに仕事だ。まだ週の半ばも過ぎていないのに、これ以上遅くなるわけにはいかない。
一緒に飲んでいたバーから駅までの道は人通りが少ない暗い道だった。傍らに小さい公園がある。まだ、駅まではもう少し距離がある。
道すがら、他愛のないおしゃべりをしながら歩いていた。
私はふと気になったことを聞いてみた。
そういえば、鬼って、どうやって人につけるの?
A子はふふっと笑みを漏らした。
「昨日はこんな道、歩けなかったよ。怖くて」
確かに、女一人では怖いだろう。
「T子からあの話を聞いたのは、先週の土曜日だった。今日は木曜日。ギリギリだった」
え?
私はA子を見た。
街灯の下に立つA子の口が薄っすらと笑みを浮かべる。前髪が影を作り、どんな目をしているかよく見えない。
「月曜日の夜、フィットネスクラブの帰り道、マンションの前に差し掛かったとき、足元に大きな影が見えた。あんまり大きな影だったから、びっくりして振り返ったけど、誰もいなかった。ただ街灯が光っているだけだった。」
「火曜日、部屋で寝ていたら、夜中に、低いくぐもった吠え声のような声が聞こえた。」
「水曜日、学校帰り。テストの採点で遅くなったんだけど、学校から出たところで、後ろから何かがついてくる。慌てて走って、人通りが多いところに行ったけど、後ろからじっと見られている感じがあって、その後はタクシーで家まで帰ったわ」
「T子は私に鬼をつけていった。だから、土曜日が1日目、日曜日が2日目、月曜日で3日目。」
「T子と話したとき、私もあなたと同じことを気にしたの。いったいどうやって鬼をつけるんだろうって。でもそのときは聞かなかった。」
「水曜日に、T子を問い詰めた。なかなか話してくれなかったけど、最後にやっと教えてくれわ。」
