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Kalraの怪談

第36章 三十六夜目:鬼送り

☆☆☆
「じゃあね、気をつけてね」
そう言って、A子は改札を抜けていった。いつの間にか私達は駅についていたのだ。A子はそのまま足早にホームへの階段を上がっていった。

なんだろう。何か気になる。

「ねえ、先生、じゃんけんしない?じゃんけんで私が勝ったら、鬼を送っていってほしいんだけど、いい?」

T子はA子にこう言った。
おそらくT子は「いいよ」と言った。

『鬼を送っていってほしいんだけど、いい?』
と、聞かれて
『いいよ』
と答えたのだ。だから、A子は鬼をつけられた。

クラスのみんなが知っている鬼送り、もう、誰もこんな手に引っかからない。だから、T子は先生に鬼をつけることにしたのだ。

じゃあ、鬼の影を見たりした、というA子の話はどうなるのだろう?
今日は木曜日で6日目。本当なら鬼に捕まる日だ。

『ギリギリだった』

え?

『鬼送りって話なんだけど、話していい?』
『ちょっと怖い話だけど、大丈夫?いい?』
『鬼送り・・・いい?』

話す前に、A子は私にこう聞いた。
私は「いい」と言った。
途端に背筋がゾクリとする。

A子は、私に鬼をつけていったのだ。

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