
Kalraの怪談
第37章 三十七夜目:人形
☆☆☆
Aさんは、定年退職をした元刑事。一番最後の所属は警視庁の花形部署である捜査第一課だった。
ところで、警察官というのは多くの場合、警察人生のどこかの時点で『ハタケ』いわゆる得意な分野を持つことが多い。警察官というと刑事と交番のおまわりさんくらいしかイメージにない人が多いかもしれないが、それ以外にも暴力団捜査とか、交通警察とか、機動隊など、様々な分野がある。そういった様々な分野のうち、『これ』という自分の道を決め(もしくは決められて)、それぞれの『ハタケ』を持つのだった。
Aさんの場合、それが『刑事』だった。
なので、Aさんは警察署(ドラマでよく言うところの「所轄」)で勤務しているときも、刑事課に配属されることがほとんどだった。
「俺がS警察署に勤務していたころ、そうだな・・・今から15年くらい前か?にあった、生安のヤマだ」
ちなみに『生安』とは”せいあん”と読み、「生活安全警察」の略称だそうだ。生活安全警察とは、刑事が扱うような殺人や窃盗などのいわゆる刑法犯以外の犯罪のほぼ全般を扱う、『なんでも屋』みたいな存在だ。
「ちょうど、その頃は、ストーカー規制法が施行されてしばらく経った頃で、生安では、そういった相談がひっきりなしだった。ストーカーの相談をないがしろにして、殺人に発展した、なんてことになったら大変だったからな。まあ、それでなくても生安はいろんな相談を受けてて大変そうだったなー」
Aさんの同僚で生安課だったKさんは、よくAさんに仕事の愚痴をこぼしていたという。
「あいつは愚痴っぽいやつだったな。でも、あるとき、本当に妙なことを言っていたんだ。ちょうど、季節は今頃、まだまだ寒い日が続いていたよ。」
Kさんが扱ったという、男がS警察署を最初に訪ねてきたのは、12月の初旬だった。仮にその男性をFとする。
Fは髪の毛を軽く茶髪にしており、今風のファッション、確かに女性にモテそうな優しい顔立ちをしている大学3年生だったそうだ。Kさんが言うには『そこそこいい男』とのことだった。
Fはストーカー被害を訴えていた。
「その被害というのが変わっていて、ここ数週間、数日に一度のペースで人形が送りつけられてくる、っていうんだ」
Aさんは、定年退職をした元刑事。一番最後の所属は警視庁の花形部署である捜査第一課だった。
ところで、警察官というのは多くの場合、警察人生のどこかの時点で『ハタケ』いわゆる得意な分野を持つことが多い。警察官というと刑事と交番のおまわりさんくらいしかイメージにない人が多いかもしれないが、それ以外にも暴力団捜査とか、交通警察とか、機動隊など、様々な分野がある。そういった様々な分野のうち、『これ』という自分の道を決め(もしくは決められて)、それぞれの『ハタケ』を持つのだった。
Aさんの場合、それが『刑事』だった。
なので、Aさんは警察署(ドラマでよく言うところの「所轄」)で勤務しているときも、刑事課に配属されることがほとんどだった。
「俺がS警察署に勤務していたころ、そうだな・・・今から15年くらい前か?にあった、生安のヤマだ」
ちなみに『生安』とは”せいあん”と読み、「生活安全警察」の略称だそうだ。生活安全警察とは、刑事が扱うような殺人や窃盗などのいわゆる刑法犯以外の犯罪のほぼ全般を扱う、『なんでも屋』みたいな存在だ。
「ちょうど、その頃は、ストーカー規制法が施行されてしばらく経った頃で、生安では、そういった相談がひっきりなしだった。ストーカーの相談をないがしろにして、殺人に発展した、なんてことになったら大変だったからな。まあ、それでなくても生安はいろんな相談を受けてて大変そうだったなー」
Aさんの同僚で生安課だったKさんは、よくAさんに仕事の愚痴をこぼしていたという。
「あいつは愚痴っぽいやつだったな。でも、あるとき、本当に妙なことを言っていたんだ。ちょうど、季節は今頃、まだまだ寒い日が続いていたよ。」
Kさんが扱ったという、男がS警察署を最初に訪ねてきたのは、12月の初旬だった。仮にその男性をFとする。
Fは髪の毛を軽く茶髪にしており、今風のファッション、確かに女性にモテそうな優しい顔立ちをしている大学3年生だったそうだ。Kさんが言うには『そこそこいい男』とのことだった。
Fはストーカー被害を訴えていた。
「その被害というのが変わっていて、ここ数週間、数日に一度のペースで人形が送りつけられてくる、っていうんだ」
