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Kalraの怪談

第37章 三十七夜目:人形

人形は、最初はフェルト布でできたものだったそうだ。目がボタンで作ってあり、中には綿が入っていたという。服装や髪型から、男性だということはわかった。
特に差出人も宛名も書いておらず、茶封筒に入った状態で郵便受けに入っていたそうだ。

こうして送りつけられてくる人形は、その時々で素材や作り方が違っていた。あるときは、紙粘土で作り、絵の具のようなもので彩色されていた。また、市販のセルロイドの人形パーツに顔を描き入れ、服を着せているような場合もあった。石膏のようなもので作ってあったりしてたこともあったという。

Fは最初の2−3個が届いているうちはそれほど気にしていなかった。邪魔なので、そのままゴミ箱に捨てていたという。しかし、ある時、人形が着ている服が自分の持っている服にそっくりだということに気がついた。

そう気づいてから振り返ってみると、人形は髪の毛の特徴や顔の作り、服装に至るまで、それが自分を模しているのだとわかった。しかも、次第に似てきているのである。

その後も、人形は届き続けたが、Fは開けもしないで捨ててしまうようになった。
いや、S警察署に来る前に、一度だけ開けてみたのだが、そのときに入っていたのは、フィギュア状の人形で、明らかにFそのものだった。そして、人形の着ている服は、なんと、その日、Fが着ていた服だったのである。
Fはゾッとして、人形を放り出していた。

もう耐えられない、そう思って相談に来たそうだ。

「なあ、Aよ、一体、ホシの狙いはなんだと思う?明らかに、Fの行動を監視している。それを伝えて怯えさせるために人形を作って送っているってことか?」

KさんはFさんからの相談の顛末をAさんに話し終わると、こう言って首を傾げた。

ただ実際に脅迫の事実があるわけでもないし、後をつけられているとか、付きまとわれているなどの実害があるわけでもない。相談を受けたものの、どうにも対応のしようがなく、Kさんとしても困ってしまったわけだ。

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