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Kalraの怪談

第37章 三十七夜目:人形

実は、このあと、1月に一回、2月にもう一回、FさんはS警察署を訪れている。
2月にAさんは、たまたま生安の相談室前で、頬がコケて、顔色が悪い男性を案内しているKさんを見た。あとになって、その男性が2月に相談に来ていたFさん自身だったのだと教えられ、初めて、あいつがそうか、と顔がわかったのだった。

「それにしても随分具合悪そうだったじゃねえか。そこそこいい男、なんて言ってた割にわよ」

AさんはKさんに言った。それほど、その男性の様子は傍目に見てもおかしかったのである。

「いや、2ヶ月前はあんなんじゃなかったんだ。例の人形はまだ送り続けられているらしくて、やっこさんだいぶ参ってしまったようなんだ。今日なんか、『変な夢を見る』とかなんとか言っててな、うつ病かなんかになってるんじゃないか?」
「生安じゃ何もしてないのか?」
「いや、1月に相談に来たあとには、地域に頼んで巡回を増やしてもらったりもしたんだが、人形はいつの間にか入れられているらしく、一向に犯人らしきヤツの正体はわからなんだ」
「気の毒だな」
「まあ、気の毒だが、ちょっとこれ以上はどうすることもできない。今日も、しっかり戸締まりしろと言って帰すだけしかできなかったよ」
「ところで、Kは、その人形とやらを見たのか?」
「ああ、1月に一回、今日も見せてもらった。さすがに不気味で、手元に置いておきたくないらしく、ここに持ってくるもの以外はほとんど封も開けずに捨ててるらしいから、一番最近届いたもの、ひとつだけを持ってきたみたいだった。確かに、不気味なほど精巧にできているんだ。最近はもっぱらフィギュアになっているらしい。大きさは俺が見たやつは両方とも背丈が15センチ位だった。たまに、大きかったり小さかったりするらしい。」

たしかにあんなのが送られてきたら気味が悪いよ。
Kさんはそうつぶやいた。

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