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Kalraの怪談

第41章 四十一夜目:ずるい

☆☆☆
事故があった日もB子とK子は、少ないお小遣いをためて買ったチケットを握りしめて、二人でライブに行っていた。ライブは隣の県で開催されており、帰りはとても遅くなってしまった。
二人が住んでいるのは一応東京都であるが、西の外れの方で、むしろ普通の人がイメージする『田舎』に町並みは近い。

夜ともなれば街灯がポツポツと灯るくらいで真っ暗である。
お金がなかった二人は、駅から降りると幹線道路沿いに家まで歩くことにした。
朝からの強行軍で、大分はしゃいで、さらに、物販で買い漁ったグッズを大きなカバンに入れての帰り道だというのに、若さゆえだろうか、二人のおしゃべりは尽きなかった。

事故は唐突に起きた。
不意に乗用車が二人めがけて突っ込んできたのである。
K子はその車にはねられて即死。
B子は足を引っ掛けただけで済んだが、それでも全治1ヶ月の怪我を負った。

K子のお母さんは松葉杖で葬儀に出席したB子を見て、複雑そうな顔をしたが、B子を責めるわけにもいかないと思ったのだろう、黙って頭を下げた。
B子はいたたまれなかった。ちょっとでも歩く位置が違えば自分も死んでいたかもしれない、それでも、自分がK子を殺してしまったように感じたのだった。

その思いは結局最後まで言葉にできなかった。B子もまた、黙って頭を下げることしかできなかった。

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