
Kalraの怪談
第42章 四十二夜目:黒い人
【黒い人】
私には姉が一人いました。
私の家は、O県の片田舎にある旧家でした。何代か前は村の庄屋をしていたということで、その頃の名残か、住んでいる家は近所のそれよりも大きなものでした。
私が10歳になるまで、家には、私の他に、先程言った4歳違いの姉と、父母、そして、父方の祖母と祖父の妹(私達は大叔母と呼んでいました)が同居していたのです。
田舎の家にありがちですが、家督は長男が継ぐ、ということで、祖父の長男であるところの私の父親が『本家』でした。しかし、父には私と姉の二人しか子ができず、そのため、私達がお嫁に行けば、本家の家督は次男の息子が継ぐことになる、と言われていました。
ところで、小さい頃から私は、この家が怖くて嫌いでした。
家そのものが古くて大きくて不気味だったのもあるのですが、実は、正確に言えば、家自体が怖いのではありません。物心ついたときから時折家を覗いている『黒い人』が私にはどうにも恐ろしかったのです。
私が『黒い人』に最初に気がついたのは、おそらく4歳の頃だったと思います。
家の庭で落ち葉を拾って遊んでいると、垣根の向こうからじっと私を見ている黒い人影がありました。最初、影だから黒いのかと思っていましたが、そうではないようです。黒い帽子をかぶり、黒色のコートのようなものを着ていました。下半身は見えなかったのですが、私はそこも黒いのだろうと想像していました。
おかしいのは何より、その顔です。本来、帽子の下に見えるはずの人間の顔に当たる部分までも影で塗りつぶしたように黒々としているのです。そして、真っ黒にも関わらず、なぜか『笑っている』ということがわかったのです。
男は近づいてきて、私に何かを言いました。私は怖くなって家の中に逃げ込んだのです。
このあとも、何度かその人影を見たことがありました。
ある時、祖母にその話をしたことがあります。祖母は、私と姉とを前にして、こんな話をしてくれました。
私には姉が一人いました。
私の家は、O県の片田舎にある旧家でした。何代か前は村の庄屋をしていたということで、その頃の名残か、住んでいる家は近所のそれよりも大きなものでした。
私が10歳になるまで、家には、私の他に、先程言った4歳違いの姉と、父母、そして、父方の祖母と祖父の妹(私達は大叔母と呼んでいました)が同居していたのです。
田舎の家にありがちですが、家督は長男が継ぐ、ということで、祖父の長男であるところの私の父親が『本家』でした。しかし、父には私と姉の二人しか子ができず、そのため、私達がお嫁に行けば、本家の家督は次男の息子が継ぐことになる、と言われていました。
ところで、小さい頃から私は、この家が怖くて嫌いでした。
家そのものが古くて大きくて不気味だったのもあるのですが、実は、正確に言えば、家自体が怖いのではありません。物心ついたときから時折家を覗いている『黒い人』が私にはどうにも恐ろしかったのです。
私が『黒い人』に最初に気がついたのは、おそらく4歳の頃だったと思います。
家の庭で落ち葉を拾って遊んでいると、垣根の向こうからじっと私を見ている黒い人影がありました。最初、影だから黒いのかと思っていましたが、そうではないようです。黒い帽子をかぶり、黒色のコートのようなものを着ていました。下半身は見えなかったのですが、私はそこも黒いのだろうと想像していました。
おかしいのは何より、その顔です。本来、帽子の下に見えるはずの人間の顔に当たる部分までも影で塗りつぶしたように黒々としているのです。そして、真っ黒にも関わらず、なぜか『笑っている』ということがわかったのです。
男は近づいてきて、私に何かを言いました。私は怖くなって家の中に逃げ込んだのです。
このあとも、何度かその人影を見たことがありました。
ある時、祖母にその話をしたことがあります。祖母は、私と姉とを前にして、こんな話をしてくれました。
