
Kalraの怪談
第43章 四十三夜目:行っちゃだめ
【行っちゃだめ】
これはまだコロナ全盛期のある年、私が友人から聞いたお話。
☆☆☆
友人のKが、今年も母親の墓前にカーネーションを供えている。
ちょうど、母の日が誕生日だった、というのもあるが、普通、墓参りなら命日だろうと思うのに、彼は『母の日』にこだわっていた。
俺とKとは、Kの母親が亡くなって随分経ってから、つまり、俺らが社会人になってからの付き合いなので、若いときのKのことや、Kの母親が亡くなった事情について俺はよく知らなかった。ただ、バカ話の端々で、昔、Kがほんとにやんちゃしていたことや、Kの母親がずいぶん若いときに亡くなったことぐらいは把握していた。
その日、俺は特に用事もなかったのでKと連絡を取り合い、昼から飲みに行こうぜと誘った。Kは『あ、墓参りの帰りでいいか?』というので、そういえば、こいつは毎年母の日に墓参りをするんだったと思い出した次第だ。
ちなみに俺はというと、自分の母親は生きているものの、Kから言われるまで母の日の存在そのものを忘れていたというような親不孝者だった。
墓参りのあと、街の居酒屋で飲み始めた。昨今は緊急事態宣言のせいで店が閉まるのが早い。そういうわけで、俺たちは早く酔おうとして、急ピッチで飲んでいた。
ちょうどよく酔いが回ったところで、俺は長年の疑問をふと口にした。
「なあ、K。お前なんだって毎年母親の墓前にカーネーションなんだ?」
つまみの枝豆を口にほ折り込みながら、
「ああ、あれな・・・。母さんに助けられたからな。それでな・・・」
と、Kは若干歯切れ悪く答えた。
なんとなく釈然としなかった俺が、なおもしつこく聞いていると、Kは不思議な話をし始めた。
これはまだコロナ全盛期のある年、私が友人から聞いたお話。
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友人のKが、今年も母親の墓前にカーネーションを供えている。
ちょうど、母の日が誕生日だった、というのもあるが、普通、墓参りなら命日だろうと思うのに、彼は『母の日』にこだわっていた。
俺とKとは、Kの母親が亡くなって随分経ってから、つまり、俺らが社会人になってからの付き合いなので、若いときのKのことや、Kの母親が亡くなった事情について俺はよく知らなかった。ただ、バカ話の端々で、昔、Kがほんとにやんちゃしていたことや、Kの母親がずいぶん若いときに亡くなったことぐらいは把握していた。
その日、俺は特に用事もなかったのでKと連絡を取り合い、昼から飲みに行こうぜと誘った。Kは『あ、墓参りの帰りでいいか?』というので、そういえば、こいつは毎年母の日に墓参りをするんだったと思い出した次第だ。
ちなみに俺はというと、自分の母親は生きているものの、Kから言われるまで母の日の存在そのものを忘れていたというような親不孝者だった。
墓参りのあと、街の居酒屋で飲み始めた。昨今は緊急事態宣言のせいで店が閉まるのが早い。そういうわけで、俺たちは早く酔おうとして、急ピッチで飲んでいた。
ちょうどよく酔いが回ったところで、俺は長年の疑問をふと口にした。
「なあ、K。お前なんだって毎年母親の墓前にカーネーションなんだ?」
つまみの枝豆を口にほ折り込みながら、
「ああ、あれな・・・。母さんに助けられたからな。それでな・・・」
と、Kは若干歯切れ悪く答えた。
なんとなく釈然としなかった俺が、なおもしつこく聞いていると、Kは不思議な話をし始めた。
