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Kalraの怪談

第43章 四十三夜目:行っちゃだめ

☆☆☆
俺の母さんは、俺が小学校4年生のときにガンで死んじゃったんだ。
あとには、父さんと、俺と、弟が残された。
弟は成績優秀だったけど、俺は勉強はからきしだった。
父さんは母さんが死んでから厳しくなってさ、俺が勉強しなかったり、テストでひどい点を取ると、怒鳴ったりするんだ。
弟と比べられてさ。兄の面目丸つぶれじゃん?
それで、まあ中学校のときにはちょっと荒れ気味でさ。
今から考えると父さんは一人で仕事もして、子供の世話もしてで大変だったんだよな。余裕なかったんじゃねの?って思う。

でも、その頃はそんなことわからないでさ、なんで俺ばっか、みたいに思ってて、面白くなくて、学校抜け出したり、喧嘩したりして、学校から呼び出されたりして。そのたびに父さんが先生に頭下げてて、ほんと、迷惑かけてたんだよな。

それで、あれは、高校生の時だったよ。
悪い仲間とつるんでさ、街で悪さしたりしていたわけ。悪さって言っても、酒飲んだりタバコ吸ったり、落書きしたりとか、そんな感じ?まあ、かわいいもんよ。
で、やっぱり同じような奴らっていてさ、似たような場所で同じように意気がっている奴がいるわけよ。別に暴力団とか半グレとかってわけじゃないんだけどさ、なんていうの?「シマ荒らされた」みたいな話になって、小競り合いをして、
最終的にドコドコで◯時に決着!
みたいな話になってさ。

俺、自分のグループのリーダーみたいになってたからさ、あとに引けなかったんだよね。それでまあ、金属バットとかさ、護身用のナイフとか持ち出して、まあ、一番に行こうとするわけよ、その場所に。

でも、内心ガクブルなわけ。自分ですら、こんな武器持っていくんだから、相手だって持ってんじゃん?とかさ。金属バットなんかで殴られたら死ぬわ、とかさ。
馬鹿だなって?
いや、ほんと、今思うとそう思うよ。マジで。
それで?そう、それでな、家を出ようとしたときさ、奥のリビングで

『ガタ!』って音がしたんだ。

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