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Kalraの怪談

第44章 四十四夜目:死縄(しじょう)

私が父に何をしているのか?と問うと、父は
「番をしているんだ」
と言いました。
葬儀が終わるまでの間、遺体を放置してはいけないことになっているんだ、と説明されました。
「なんで?」
と私が聞くと、父は笑いながら
「昔から、番をしていないと遺体が生き返って逃げてしまう、と言われているんだ」
と言うのです。いくらなんでもそれは迷信だろう、と私は思っていました。
しかし、父は、
「ほら、見てみろ」
と伯父が眠る布団をめくって見せました。そこには、手足を荒縄でしっかりと縛られている伯父の姿がありました。顔に負けないくらい青白くなっている手や足に、食い込まんばかりに荒縄を縛り付けています。力が強いせいか、赤黒い血が滲んでいる様子も見えました。

私はたまらず目を背けました。

「こうしておかんと、死体が間違って生き返って山に逃げよるんだ」
父は真顔でそう言いました。そして、
「おう、そうだ、明日の夕方、俺は葬儀の手配に行かなきゃいけない。その間、兄貴の番をお前がしてくれ」
というのです。正直、嫌でしたが、この頃の父の命令は絶対でしたので、私は黙って頷くしかありませんでした。

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