テキストサイズ

Kalraの怪談

第44章 四十四夜目:死縄(しじょう)

☆☆☆
次の日の夕方、父は出かけていきました。私は父が帰ってくるまでの3時間あまり、死人の番をすることになりました。
仏間に入ると、私は伯父の遺体からできるだけ離れたところに腰を下ろし、膝を抱えました。一応小説や漫画本を持っては来ましたが、全く読む気にはなれません。
かといって伯父の遺体を見つめるのも嫌でした。
仕方がないので、同じ部屋にいながら明後日の方向、天井近くの壁にかけられた時計ばかりを見て過ごしていました。

時計を見ながら過ごす時間は恐ろしくゆっくりでした。静かな仏間に、柱時計のカチ、カチ、カチという音だけが響きます。
まだか・・・
30分も経たない内に、ものすごく辛くなってきました。抱えた足に顔をうずめます。早く父が帰ってこないかとそればかり考えていました。

そのとき、
ザッ
と、なにか衣擦れのような音がしました。
顔を上げてあたりを見回します。
特に何かが動く気配はありません。
気のせいか・・・
そう思って時計を見た時、また、
ザッ、ザッ・・・
また、音がしました。今度は確実でした。
この部屋で音を立てるものといえば・・・
私はゆっくりと伯父の遺体に目を向けました。
動いて・・・ないよな?
伯父は変わらず眠り続けています。青白い顔、目は閉じ、口は半開きになり、身じろぎもしていません。
ほっ、として視線を外そうとした時、
びくん・・
伯父に掛けられた布団が痙攣するように動きました。
「ヒッ・・・」
私は声にならない叫びを上げ、伯父を凝視します。
見ている間に、また動きます。

間違いない。伯父の遺体が動いているのです。
目は閉じていますが、もぞもぞと布団の下で確かに動いています。
縛られているせいか、大きな動きではないですが、間違いなく動いているのです。
「うわー!!!」
私は情けないくらい大きな声で叫びました。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ