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Kalraの怪談

第52章 五十二夜目:かか切りの竹

「『かか切りの竹』っていう話なんだけど、T県S町に、ある竹林があるんだけど、その竹林の竹を男性が切ると、妻が事故や病気で死んでしまうんだって。」

なるほど、『かか』というのは『妻』という意味か。切ると自分の妻が死んでしまうから『かか切り』というわけだ。

「それで、面白いのは、資料館の館長曰く、妻に先立ってほしい男性が夜ごとに竹林に侵入してきて、竹を切ろうとするんで、その竹林がある山を持っている人がえらく困っているっていうの。とうとう、竹林をしっかりフェンスで囲っちゃったんだって。」

なんか信憑性があるよねー、とA子は笑った。

「今は、その土地はフェンスを張った人の一人息子が相続したみたいだけど、借金を苦にして自殺しちゃったんだって。」
「それと、その『かか切りの竹』だけど、死ぬのは妻に限らないらしいんだよね。例えば、その切った男に妻がいない場合には、母親や姉が死ぬみたい。それもいなければ、親戚筋の女性とか。血縁を辿っていくっていうから相当強力な呪いなんだろうね」
「明日、ちょっとS町のその人のところに取材に行こうと思っている」

そう言うと、おやすみ―とA子は回線を切った。
結論を言うと、A子と話すのは、これが最後になった。

1️ヶ月くらいしてから、友人づたいに聞いたのだが、この会話をした翌日、A子の乗ったレンタカーが山間の崖から落ちて大破。
A子も帰らぬ人になった、ということだった。

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