
Kalraの怪談
第7章 七夜目:よくも
ところが、今度は店長と一緒にシフトに入ったアルバイトが、妙な事に気づいた。
「悪かったよ・・・」
店長がふと独り言を言う。普段はそんなことを言わない店長だったので、ちょっとギョッとした。店に誰もいない時、バックから在庫を取って戻ってきたときなどが特にひどかった。
「もういい加減してくれよ」
など、苛立っているときもあれば、
「ごめんよ、ごめんよ・・・」
半ば泣きそうになっているときもあった。
店長はみるみる衰弱していった。食事もろくに取らず、顔色が悪くなっていった。仕事こそこなしているものの、どこかいつも上の空であった。この様子を見て、アルバイトの中では「店長に恨みがある女性の幽霊が出ているんだ」という噂が流れ出し、次々にアルバイトがやめる事になった。
最初にやめたのは、実際に幽霊の声を聞いたM実やK子であった。
3ヶ月後には、店長は病気のため休暇を取るようになり、店は本部スタッフが来て切り盛りするようになっていった。バイトがいつくまで本部からのテコ入れがあったので、店はなんとか存続できた。
店長が休暇を取って以来、幽霊はぱったりと出なくなった。
実は、この話を教えてくれた女性というのは、この店長の妹だった。
その女性は言った。
「兄は私が言うのも何ですが、ひどい人でした。
顔がよく、もてる感じだった兄でしたが、身持ちが悪く、何人もの女性を付き合い、すぐに捨てていましたから。
中には、妊娠させたが、そのまま音信不通にした、なんてことを言っていることもありました。
その中のひとり、高校生の子でしたが、兄に妊娠させられ、挙句に捨てられ、堕胎を余儀なくされた子がいました。
その子は手首を切って、昏睡に陥ってしまったのです。
ちょうど、兄の店で幽霊が出ると言われていた頃です。
私はピンときました。
この女性は、ちょっと前まで兄の店でバイトをしていたからです。
私はM実やK子、T夫に会いました。
彼らはすぐに白状しました。友達をひどいカタチで捨てた店長に仕返しを考えたと。
彼らは自分らが夜シフトに入ったときの幽霊話をでっち上げたのです。ホンの出来心だったのだろうと思います。兄が困ればいいと。
しかし、兄が夜シフトに入るということで、そのイタズラもできなくなりました。
事態はそれで終わるはずだったのです。」
「悪かったよ・・・」
店長がふと独り言を言う。普段はそんなことを言わない店長だったので、ちょっとギョッとした。店に誰もいない時、バックから在庫を取って戻ってきたときなどが特にひどかった。
「もういい加減してくれよ」
など、苛立っているときもあれば、
「ごめんよ、ごめんよ・・・」
半ば泣きそうになっているときもあった。
店長はみるみる衰弱していった。食事もろくに取らず、顔色が悪くなっていった。仕事こそこなしているものの、どこかいつも上の空であった。この様子を見て、アルバイトの中では「店長に恨みがある女性の幽霊が出ているんだ」という噂が流れ出し、次々にアルバイトがやめる事になった。
最初にやめたのは、実際に幽霊の声を聞いたM実やK子であった。
3ヶ月後には、店長は病気のため休暇を取るようになり、店は本部スタッフが来て切り盛りするようになっていった。バイトがいつくまで本部からのテコ入れがあったので、店はなんとか存続できた。
店長が休暇を取って以来、幽霊はぱったりと出なくなった。
実は、この話を教えてくれた女性というのは、この店長の妹だった。
その女性は言った。
「兄は私が言うのも何ですが、ひどい人でした。
顔がよく、もてる感じだった兄でしたが、身持ちが悪く、何人もの女性を付き合い、すぐに捨てていましたから。
中には、妊娠させたが、そのまま音信不通にした、なんてことを言っていることもありました。
その中のひとり、高校生の子でしたが、兄に妊娠させられ、挙句に捨てられ、堕胎を余儀なくされた子がいました。
その子は手首を切って、昏睡に陥ってしまったのです。
ちょうど、兄の店で幽霊が出ると言われていた頃です。
私はピンときました。
この女性は、ちょっと前まで兄の店でバイトをしていたからです。
私はM実やK子、T夫に会いました。
彼らはすぐに白状しました。友達をひどいカタチで捨てた店長に仕返しを考えたと。
彼らは自分らが夜シフトに入ったときの幽霊話をでっち上げたのです。ホンの出来心だったのだろうと思います。兄が困ればいいと。
しかし、兄が夜シフトに入るということで、そのイタズラもできなくなりました。
事態はそれで終わるはずだったのです。」
