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Kalraの怪談

第57章 五十七夜目:取りかえっ子

☆☆☆

「3回の『アレ』との遭遇で、私は確信したんです。私達が住んでいるこの町には、人のように見えて人じゃない何かがいるんだって」

放課後に立ち寄った喫茶店でRさんは私に力説しました。
この頃からすでに、私は友人達の間でもちょっと怖いことの相談に乗ってくれる人、という妙な位置づけになっていたせいで、よくこのような話を持ちかけられていたのです。

うーん、何とも言えないな・・・。

私は注文したアイスコーヒーを飲みながら、なんと答えたものか思案していました。
Rさんは3回出会ったモノが同じだと確信しているようですが、話を聞く限りでは、良く似た年頃の子を見間違えたり、成長による面変りなんかで勘違いしたりとかでも説明できそうでした。

「どう・・・思います?」

うーん。。。

ただ、怪異ではないという確証もなかったので、とりあえず、あまり関わらないようにするべきでは?というありきたりのアドバイスをすることしかできませんでした。

「まあ、そうなんですけど・・・」

Rさんは私の返答にあまり満足がいかないようでした。
そんな事言われても・・・。

そんな話をしている時、お店に中学生くらいの女の子が入ってきました。

「あ、お姉ちゃん。ここにいたんだ・・・。お母さん、早く帰ってこいって」
「あ、うん。わかった」
Rさんはその子に答えました。

姉妹なの?

尋ねると、「そう、妹です」と紹介してくれました。

「ごめん、お母さん呼んでるみたいだから、今日はこれで・・・」

私とRさんは会計をして店を出ました。
Rさんと妹さんは手を繋いで一緒に帰っていきます。

仲の良い姉妹だな・・・。
私は夕陽の中消えていく2人を見送りました。

でも、待てよ?
Rさんのさっきの話を聞いてる限り、彼女は一人っ子ぽかったけど・・・。

そのとき、妹が私の方を振り返りました。

夕陽を背景に、逆光で顔は見えないのですが、確かに笑っているようでした。
そして、その口は、目鼻に似合わないほど大きかったように、そのときは感じられたのです。

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