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Kalraの怪談

第58章 五十八夜目:呪いの代償

【呪いの代償】

警察官というのは、世間一般で考えているより大変な仕事だ。人が危険だと思って逃げるところに向かってわざわざ行かなければならないのはもちろん、特にきついのは、ご遺体を多く見ることだ。
ご遺体といっても様々で、亡くなったばかりのものもあれば、数日経って腐敗が進んでいるもの、溺死したために見るも無残になっているものまでたくさんある。

警察官になって初めて知ったのは、私達日本人が、普段はいかに人の死を見ずに過ごせているかということだった。

これは、僕が大先輩の刑事から聞いた話だ。先輩とは、その日、二人で焼き鳥屋で飲んでいた。酒が入ると若い頃の武勇伝を話したがる、典型的な『先輩肌』の先輩だったが、そういう人にありがちなように、面倒見がよく、仕事もよく教えてくれるので僕は慕っていた。
「なあ、お前、呪いってあると思うか?」
先輩が藪から棒に言い出した。
「はあ、呪いっすか?あるとは思えませんね」
「俺が、ちょうどお前くらいだった頃、そうだな〜、刑事になって2年目くらいだったか。ある変死体を扱ったんだ」

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