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Kalraの怪談

第59章 五十九夜目:花火

しばらくし、またK太が口火を切る。
「あんときゃ言わなかったけど、あの話に対して俺が考えたことが、実は、もう一つあるんだ。」
「なんだい?」
「俺が、小さい頃に会ったのは、彼女の母親だったんじゃないかって。だから、似てて当然。そして、浴衣は母親から娘に手渡されたんだって。『久しぶり』って言ったのは、俺は覚えていなかったけど、あいつとは小さい頃に会っていたんじゃないかって。」
「ああ、なるほどな」
それなら納得がいく。実は6歳の時、朝顔の君が言った『一緒に過ごしてくださる?』は娘と一緒に過ごしてくれるか?と聞いたのかも知れない。

「ただな、この解釈にも2つ問題がある。
 ひとつは、俺は小さい頃に朝顔の君に会っていたとき、小さい女の子がいた記憶が全く無い。
 そして、もう一つは・・・あいつは消えたんだ」
「消えた?」
僕が繰り返すと、K太は声のトーンを落として続けた。
「追いかけたよ。追いかけて追いかけて、湖まで追っていったんだ。でも、そこで、」

闇に溶けるように、消えたんだ。俺達の目の前で。

と。

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