
Kalraの怪談
第12章 十二夜目:足跡を追うな
「じいちゃんは自分が死ぬのがわかったからかもしれない。
俺もじいちゃんに同じことを聞いたよ、
『アレは何だったんだ』って。
じいちゃんは、
『アレは、”モノ”だ。人が見ちゃいけないものだ。
お前の友達はモノに連れて行かれたんだ。
お前の匂いを覚えて、
お前を追いかけてくると思った。
そのときに撃ち殺そうと思っていたけど、
山から降りてこなかった。
きっと、お前の友達を喰って、
満足したのだろうと思っていたが、
その日から毎日毎日、
いつ、モノが山からお前を攫いに来るか、
気が気ではなかった。
毎日、毎日、念仏を唱えて、仏様におすがりしておった』
と。
その話が本当なら、じいちゃんは50年近く、
俺のために念仏を唱えてくれていたみたいだった」
「妙な話だね」
その場はそれで終わりになった。
親父は酒をぐいと飲み干すと「出よう」と言った。
じいちゃんの四十九日の法要が終わったあと、
程なくして、親父は死んだ。
会社からの帰り道、
野犬か何かに襲われたらしい、ということだった。
野犬?この街中で?
誰もが思ったが、獣に噛みつかれたような傷といい、
爪痕が残された皮膚といい、
何よりも内臓が食い荒らされている様子といい、
野犬としか言いようがなかった。
目撃者はいない。
遺体を前に、
母ちゃんは泣きはらし、
妹は呆然としていた。
俺は親父が話してくれたことを思い出して、
震えていた。
モノは、
じいちゃんの守りがなくなってすぐに
親父を喰いに来たんだ・・・
俺もじいちゃんに同じことを聞いたよ、
『アレは何だったんだ』って。
じいちゃんは、
『アレは、”モノ”だ。人が見ちゃいけないものだ。
お前の友達はモノに連れて行かれたんだ。
お前の匂いを覚えて、
お前を追いかけてくると思った。
そのときに撃ち殺そうと思っていたけど、
山から降りてこなかった。
きっと、お前の友達を喰って、
満足したのだろうと思っていたが、
その日から毎日毎日、
いつ、モノが山からお前を攫いに来るか、
気が気ではなかった。
毎日、毎日、念仏を唱えて、仏様におすがりしておった』
と。
その話が本当なら、じいちゃんは50年近く、
俺のために念仏を唱えてくれていたみたいだった」
「妙な話だね」
その場はそれで終わりになった。
親父は酒をぐいと飲み干すと「出よう」と言った。
じいちゃんの四十九日の法要が終わったあと、
程なくして、親父は死んだ。
会社からの帰り道、
野犬か何かに襲われたらしい、ということだった。
野犬?この街中で?
誰もが思ったが、獣に噛みつかれたような傷といい、
爪痕が残された皮膚といい、
何よりも内臓が食い荒らされている様子といい、
野犬としか言いようがなかった。
目撃者はいない。
遺体を前に、
母ちゃんは泣きはらし、
妹は呆然としていた。
俺は親父が話してくれたことを思い出して、
震えていた。
モノは、
じいちゃんの守りがなくなってすぐに
親父を喰いに来たんだ・・・
