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Kalraの怪談

第17章 十七夜目:コインロッカー

<リストラされた男性の証言>
あの体験が何だったのか、自分の中ではっきりとした結論は出せないままだ。
一つだけ言えることは、あまり深入りしないほうがいい、ということだ。

私は会社をリストラされ、しばらく職がなくブラブラしていた時期があった。あの体験をしたのは、そんな時のことだった。

ある日、私の携帯に電話がかかってきた。いくつか受けている採用試験の合否通知かと思い、勢い込んで出てみると、妙に機械音的な女性の声でこう言われた。

「割のいいアルバイトがあるのですが、興味はありませんか?」

いたずらか、何かの詐欺かと思い、切ろうかと思った矢先

「1時間ほどの作業で10万円を用意いたします。」

と言われ、気持ちがぐらついた。
正直、その時は収入のあてはなく、お金に困っていた。まだ失業保険は出ているにしても、余剰資金はいくらあっても良かった。

「仕事はカンタンです。あるコインロッカーから荷物を取り出し、別の駅のロッカーに入れてもらうだけです。」

ものすごく怪しい。覚せい剤とか、後ろ暗い金とか、そういうのではないのだろうか?犯罪の片棒をかつぐことになるんじゃないだろうか・・・。

そう思いながら、私は話を聞き続けてしまった。先方はそれを「諾」の印と受け取ったのかもしれない。更に話を進める。

「条件がいくつかあります。
 ひとつ、ロッカーの中身については、誰にも他言しないこと。
 ふたつ、ロッカーの中身の「中」を決して見ないこと。
 みっつ、ロッカーの中身をすべて全く同じように移すこと。」

引き受ける場合には、鍵は午後にでも郵便受けに入れておく、というのだ。私はちょっと迷ったが、引き受けることとした。

果たして、ロッカーの鍵とコインロッカーの場所を記した紙が午後、いつの間にかポストに投函されていた。期限は明日の夕方までで、次のロッカーの場所は自分で決めていいということだったが、環状のY線の駅の何処かでなければいけないとのことだった。
紙には、終わったあとの連絡先と報酬の引き渡し方法も記載されていた。

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