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Kalraの怪談

第18章 十八夜目:死人の目

【死人の目】

いつものように俺はご遺体に手を合わせる。
検視作業に入るときのルーティンだった。

横で、ついこの間刑事になったばかりのEが、怪訝な目で見ていた。
現場を荒らさないように慎重に検分を進める。

首に索条痕
瞼にうっ血
典型的な、絞殺体・・・

写真を撮り終わると、ご遺体を裏返し
紫斑、死後硬直のチェック
直腸温の検温

気温との関係から考えると、死後・・・5時間、くらいか。

Eに判明した事実を淡々と告げる。
Eはそれをせっせと検視メモに落とし込んでいった。

捜査員と情報を共有し、捜査に移る。
一通りここでできる検視を終えると、ご遺体が運び出されていった。

その際に、俺はもう一度手を合わせる。

そんな俺をEがなにか言いたそうに見ていた。
「随分、信心深いな・・・てか?」
ちらっと横目で見てやると、顔を引き攣らせてやがる。
図星と、顔に書いてある。
刑事としては顔に出すぎだ。

「まあ・・・ちょっとは・・・そう」

だって、先輩いつもはそんなんじゃないから・・・、と。

その日は一晩中捜査で、結局、解放されたのは翌日の10時だった。
それも一時帰宅が許されただけで、またすぐに捜査に入る。

とりあえず、腹ごしらえだ。

俺はEを伴って朝からやってる牛丼屋に入った。
長年やってる俺からすれば全く問題なかったのだが、
初めて遺体の検視に立ち会ったEは食欲が出なかったようだったが、
こんなことくらいで飯が食えなくなっていては警察官は務まらない。

食え。

「俺が信心深いの、気になるか?」
やや青い顔をして牛皿定食を食っているEに問いかけた。
ちなみに俺は牛丼大盛りをすでに食べ終わっている。

先輩の問いかけだし、礼儀だと思ったのか、本当に興味があるのかわからないが、Eが頷いたので、俺は、自分が刑事になって初めて体験した変死体の話をしてやった。

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