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Kalraの怪談

第21章 二十一夜目:ゴローさん

業を煮やして、私はAちゃんの家に直接行ってみることにした。

一応病気だというので、果物をお見舞いに買い、Aちゃんの家を訪ねた。Aちゃんの家の呼び鈴を2度3度鳴らす。
案の定、出てこなかった。
それでも、人の気配はするので、なおも、押してみた。

5回目くらいにガチャリと音がして錠が開き、扉が細く開いた。戸口にいたのはAちゃんだった。
Aちゃんは訪ねてきたのが私だとわかると、すぐに戸を開けてくれた。顔はひどくやつれており、目が落ちくぼんでいた。扉を支える手もひどく細くなっているようだった。ろくに何も食べていないような感じだった。

私はAちゃんに促されて、家に入った。その時、ムッとするような、なんとも言えない悪臭がした。

「Aちゃん一体、どうしたの?」
私が聞くと、Aちゃんは例のニタリという笑顔を見せた。
「ゴローさんが来たの」
ひどい臭い中、私とAちゃんは小一時間ほど話をしたけど、Aちゃんの言っていることはなんとも支離滅裂だった。

「ゴローさんが来た」
「あいつが飛んでいった」
「ママも喜んでいる」
「ママも同罪」
「やったんだ」
などなど。

私は、とにかくAちゃんを病院につれていかなければと思った。何か心の病気になったのだと思ったからだ。でも、なんと言っていいかわからない。母親の所在を聞くと、ただ、ニヤニヤとするばかりで教えてくれない。
とりあえず、誰か大人の助けを借りなければ始まらないと思い、私は、一旦家に帰ることにした。

その後、先生や自分の親に相談をした。先生は、スクールカウンセラーを伴って、Aちゃんの家に行ってくれたようだったが、結果、それから、私はAちゃんには二度と会えなくなることになった。

部屋に、Aちゃんの母親と、その恋人の腐乱した死体があったのだ。

Aちゃんは「ゴローさんが殺した」「勝手に死んだ」と言ったが、胸に刺さった包丁からはAちゃんの指紋が検出されたそうだ。結果的に、Aちゃんは殺人の容疑で捕まり、精神鑑定の結果、医療少年院に行くことになったようだった。

おそらく、Aちゃんは「ゴローさん」に「父親が死ぬように」と願ったのではないだろうか。それが、あの形で叶った、ということではないかと、私は思っている。
あの、木の向こうから見ていた、女性の顔・・・。
あの顔は、後になって思えば、やつれ果てたAちゃんの顔にそっくりだった。

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