テキストサイズ

自殺紳士

第11章 Vol.11:いらない人

☆☆☆
数日後、わたしは退院した
 自殺未遂をしたらしい

親族に連絡が行き、
 わたしは会社を1ヶ月ほど休むことになった

休んでいる間、
 わたしは色んな所に行った
 映画を見た
 美術館に行った
 前にCMで見た、瀬戸内海の島にも行ってみた
 趣味のサークルがあったので、参加してみた
 ダイビングのワークショップ
 陶芸教室

そこで、人に会った
 人と話をして
 また来ますと
   そう言った

別にわたしは要らない人ではないとは思えていない
 でも、「わたしは必要な人なのか?」
と考えることは、少なくなった。
その問い自体が、わたしにとって、あまり必要でなくなったのかもしれない。

それでも、ふと、
 「わたしは必要な人なのかな」
と思うときはある

そういうとき、必ず思い出す光景がある
 経験していないはずなのに、確かに知っているという
不思議な光景

 それは涙、
  言葉もなく
 わたしを見つめる目と涙

ただ、ただ、温かかった

ストーリーメニュー

TOPTOPへ