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自殺紳士
第12章 Vol.12:宵闇を歩く
「会社はお休みできないんですか?」
青年は言う
そもそも死のうとしたんだ、
そう思えば何でもできる
俺は、次の日会社に、
可能な限りの長期休暇の申請を出した
そして、安く滞在できる湯治場を探して
ただただ、ひたすらにぼんやりすごした
お湯が流れて
木が風にそよいで
遠くで知らない人が
ゆっくりおしゃべりしている
何も、無い時間
ただ、自分がいる時間
どこに行く必要もない
どこに帰る必要もない
ここに、いればいい
こんな時間の過ごし方があることを
俺は、初めて知った
1ヶ月ほどたったころ
俺は、自分がどうしたいのか
やっと、分かった
誰かに教えてもらったわけでもなんでもなく
ただ、分かった
そうして、俺はここを離れる決意をした
次の日俺は、湯治場の主人に挨拶をした
ここを出ると言って、精算をする
見ると、同じタイミングで一緒に湯治場を去る人がもう一人いた
黒いスーツに
かろうじて黒ではない濃紺のネクタイという
およそ湯治客には見えない男だった
顔には特徴がなく、
すぐに忘れてしまいそうな感じの青年だった
青年が俺に会釈をする
俺も軽く会釈をした
少ない荷物を持って宿を出る
空はきれいに晴れていた
俺はひとつ、伸びをして
歩き出した
青年は言う
そもそも死のうとしたんだ、
そう思えば何でもできる
俺は、次の日会社に、
可能な限りの長期休暇の申請を出した
そして、安く滞在できる湯治場を探して
ただただ、ひたすらにぼんやりすごした
お湯が流れて
木が風にそよいで
遠くで知らない人が
ゆっくりおしゃべりしている
何も、無い時間
ただ、自分がいる時間
どこに行く必要もない
どこに帰る必要もない
ここに、いればいい
こんな時間の過ごし方があることを
俺は、初めて知った
1ヶ月ほどたったころ
俺は、自分がどうしたいのか
やっと、分かった
誰かに教えてもらったわけでもなんでもなく
ただ、分かった
そうして、俺はここを離れる決意をした
次の日俺は、湯治場の主人に挨拶をした
ここを出ると言って、精算をする
見ると、同じタイミングで一緒に湯治場を去る人がもう一人いた
黒いスーツに
かろうじて黒ではない濃紺のネクタイという
およそ湯治客には見えない男だった
顔には特徴がなく、
すぐに忘れてしまいそうな感じの青年だった
青年が俺に会釈をする
俺も軽く会釈をした
少ない荷物を持って宿を出る
空はきれいに晴れていた
俺はひとつ、伸びをして
歩き出した
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