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自殺紳士

第12章 Vol.12:宵闇を歩く

夢中で話してしまい、ふと我に返って
若干恥ずかしくなる

いくらなんでも、青年は引いているだろう
そう思って、顔を上げて驚いた

青年も
泣いていた

「あなたを傷つける人のそばに
 いる必要なんて、ないですよ・・・」

妻にも理由があったのだろう
 死ねと言わざるを得ない
 何らかの理由が
 それでも、それでも・・・

「あなたを大事にしてくれるところに
 いましょうよ」

ぼろぼろと泣きながら訴える青年の言うことは
至極真っ当なようで
 まるで遠い国の言葉を聞いてるようだった

「俺を・・・大事に?」

口に出してみて、違和感がある
 違和感があることに、軽くめまいがする

自分を大切にすることが
 おかしなことと感じるなんて
なんて、おかしな世界で
俺は生きていたんだろう・・・

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