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自殺紳士

第2章 Vol.2:理由のない命

電車はあっけなく終点についた。
終焉の地だった。

だけど、当初の予定と異なり、
隣に何故か黒づくめの男がいる。

喪服のような黒い服、
かろうじて黒ではない紺色のネクタイ
髪の毛を端正にまとめている
20代くらいの青年だった。

この男はなぜか私が死のうとしていたことを知っていた。
不思議なことだった。

どうやら、男は私が死ぬのを止めたいらしい。
ただ、どうして良いかわからない様子だった。

なんなんだろうか?

「君は一体誰だ?」

出会ってから、1時間以上してから
私は、根本的な質問をした。

男は頬を人差し指で掻きながら答える。
「えー。話せば長いし、多分、信じてもらえないし、
 話してもしょうがないし・・・。」

不思議な男だった。
私はこの若い男に意地悪をしたくなった。

「君は私が死ぬのを止めたいと思うのだろう。
 君は私が死にたいことを何故か知っていた。
 私も君のことを知る権利があると思うのだがね?」

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