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自殺紳士

第2章 Vol.2:理由のない命

男は困ったような顔をする。
「・・・いいですけど。笑わないでくださいね。
 ボク、実は死んでるんです。」


意味がわからない。幽霊だとでも言うのだろうか。
こんな昼間に?幽霊にしては実体がありすぎる。

「ほら、そういう顔する」

当たり前だ。二の句が継げない。
もしかしたら、こいつ病気かもしれない。
色んな思いが浮かぶ。

男はため息を付きながら話を続ける。
変わった身の上話を始めた。

ーもう、何年経ったかわかりませんが、
 ボクは、自殺しました。
 なんで死のうとしたのか、全く覚えていません。
 ただ、自分で死んだのです。
 
 死んだあと、ボクは扉の前に立っていました。
 そこで、声を聞きました。
 あれは多分神様なのでしょう。

 声は、終わるべきではない命を終わらせた罪として
 下界に降りて、決められた人数の自殺者を助けよ
 と言いました。

 ところが、決められた人数がどうしても思い出せません。
 100人だったのか、1000人だったのか
 ひょっとしたら、この世のすべての自殺者を救うまでかもしれません。

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