
自殺紳士
第17章 Vol.17:逃げるひと
【逃げるひと】
マイカーを走らせ、ナビに適当にセットした森の中へ
自宅から3時間の道のり
車を止め、外に出る。
夏の最中だというのに、都会から離れたせいか、
空気はひやりと澄んでいる気がする。
空を見上げると、やたらときれいな星達が
冗談みたいにばらまかれたガラス片のように煌めいていた。
遠くで、『ホウ、ホウ』と
フクロウの声がする。
少し、呼吸を整えようと、
俺は、タバコに火をつけた。
ニ、三回吸うが、やはり落ち着かず、
すぐにもみ消した。
また、空を見上げる。
変わらない、星空。
俺がどうでも、どうなっても。
「世界は・・・キレイだなあ」
呟いてみた。
そんなこと、俺は一度たりとも思わなかったし、
今だって、本気でそんなふうに思ってはいない。
ただ、なんとなく、言ってみただけだった。
5分くらいそうしていただろうか
別に急かされたわけでもないけれども、
これ以上、じっとしていると、決心が鈍りそうな気もした。
だから、終わりを始めることにする。
トランクから養生テープを取り出して、
車に厳重に目張りをする。
用意した簡易コンロに、練炭、着火剤
一通り用意ができたので、運転席に腰を下ろした。
シートを傾けて、水筒と、睡眠薬
これを飲み下して、あとは、時限式の着火剤まかせ
数時間後には夢見心地であの世へドライブってわけだ。
さて・・・
ところが、
薬を口に入れようとした時、思わぬことが起きた。
ガチャ
助手席の扉が開き、男がひとり乗り込んで来たのだ。
黒色のスーツに、黒っぽいネクタイ
年は若い、俺より10は下だろう。まだ20歳そこそこ
そんな青年が、まるで友人の車に乗り込むかのように自然に乗ってきた。
「こ・・・こんばんわ」
青年が、ぎこちなく挨拶をする。
俺はあまりのことに、手に取った薬をポロリと床に取り落としてしまった。
「あの・・・もしよければ、あの物騒なもの、しまいません?」
青年はちらりと横目で後部座席を見て、そこにある簡易コンロを指さした。
マイカーを走らせ、ナビに適当にセットした森の中へ
自宅から3時間の道のり
車を止め、外に出る。
夏の最中だというのに、都会から離れたせいか、
空気はひやりと澄んでいる気がする。
空を見上げると、やたらときれいな星達が
冗談みたいにばらまかれたガラス片のように煌めいていた。
遠くで、『ホウ、ホウ』と
フクロウの声がする。
少し、呼吸を整えようと、
俺は、タバコに火をつけた。
ニ、三回吸うが、やはり落ち着かず、
すぐにもみ消した。
また、空を見上げる。
変わらない、星空。
俺がどうでも、どうなっても。
「世界は・・・キレイだなあ」
呟いてみた。
そんなこと、俺は一度たりとも思わなかったし、
今だって、本気でそんなふうに思ってはいない。
ただ、なんとなく、言ってみただけだった。
5分くらいそうしていただろうか
別に急かされたわけでもないけれども、
これ以上、じっとしていると、決心が鈍りそうな気もした。
だから、終わりを始めることにする。
トランクから養生テープを取り出して、
車に厳重に目張りをする。
用意した簡易コンロに、練炭、着火剤
一通り用意ができたので、運転席に腰を下ろした。
シートを傾けて、水筒と、睡眠薬
これを飲み下して、あとは、時限式の着火剤まかせ
数時間後には夢見心地であの世へドライブってわけだ。
さて・・・
ところが、
薬を口に入れようとした時、思わぬことが起きた。
ガチャ
助手席の扉が開き、男がひとり乗り込んで来たのだ。
黒色のスーツに、黒っぽいネクタイ
年は若い、俺より10は下だろう。まだ20歳そこそこ
そんな青年が、まるで友人の車に乗り込むかのように自然に乗ってきた。
「こ・・・こんばんわ」
青年が、ぎこちなく挨拶をする。
俺はあまりのことに、手に取った薬をポロリと床に取り落としてしまった。
「あの・・・もしよければ、あの物騒なもの、しまいません?」
青年はちらりと横目で後部座席を見て、そこにある簡易コンロを指さした。
