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バニーガールホール

第8章 飢えと渇きとモヒート



『どうぞ…お待たせしました…』

そう言って俺の前に、
頼んでないモヒートが置かれて。

俺の前にグラスを置いた
ユイの顔を下から見上げる。

カウンターテーブルの上に
モヒートのグラスを置いた
ユイの手は、まだグラスから離れて無くて。

俺は目の前のグラスに手を伸ばした。


モヒート……か。


モヒートのグラスの…冷たい感触、
指先に触れる…ユイの指の
温かい感触が…伝わって来る。


心の渇きを癒やして……


モヒートのカクテル言葉…。

俺が…あの夜に…、この店に
吸い込まれる様に入ったあの夜に
ユイが…俺に…出してくれた
カクテルの中の…1杯が、
確か…モヒートだったな……。


乾いてるのは…

満たされないと…感じているのは…、

俺なのか…それとも…

カウンタ―の向こうの彼女なのか…?


満たされたいと…思っているのは、

心の渇きなのか…身体の渇きなのか…。


俺は…ミントがグラスの中に散りばめられた
モヒートのグラスを傾けた。

一緒に口の中に入って来た
フレッシュなミントの葉を噛むと、
口の中にミントの爽やかな香りが広がる。


「誰の所為だよ……お互い様だろうが…よ」


俺はモヒートのグラスを傾けながら、
独り言の様にして呟いた。


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