テキストサイズ

Lの劣情

第1章 2024年6月吉日…

1

 瞳先輩と16年振りに再会したのは…
 去年、つまり2024年6月の吉日の大学バスケ時代の、いや、全日本アンダー時代からの盟友の結婚式の会場であった。

「あれ、『ミッキ』だよね?」

 披露宴会場である都内の某ホテルのトイレの化粧台の鏡の前で化粧をチェックしていると、鏡に写った向こう側から不意にそう声を掛けられたのだ。

 わたしは『美紀谷悠里(みきたにゆり)』という名前なので、幼馴染からやバスケット関係者からはその苗字の美紀谷(みきたに)から『みっき』と呼ばれていたし、バスケプレイヤー時代でのコートネームもそこからの由来で『ミッキ』と呼ばれていた。

「えっ、あっ、ひ、あ、アイ先輩?」

「うんそうよ、キャぁぁミッキ、久しぶりねぇ」
 するとそう小さく叫んだ彼女が後ろからわたしを抱き締めてくる。

「うわぁぁ、チョー久しぶりぃ、大学以来だからぁ?」

「え、あ、はい、そうですね…
 あ、うんとぉ、じ、16年振りですかねぇ?」
 と、わたしが言う。

「えぇ、あっ、そうかぁ、もう16年も経つのかぁ?」
 
 そう呟く彼女、瞳いやアイ先輩は本名を『森瞳(もりひとみ)』
 瞳(ひとみ)だから『eye』『アイ』というコートネームであり、一つ歳上の全日本アンダー15からの関係の先輩…
 元々が高身長で既に180cm近くあり、当時の同世代の全日本カテゴリーでは不動のセンターとして揺るがない存在感を発揮していた。
 そして高校は当時の日本一と云われた高校で3年連続優勝をし、大学でも大活躍をし全日本代表を10年務め、現在は某大学のヘッドコーチをしている。

 そんな『eye』『アイ先輩』とは、わたしが13歳に初めて全日本アンダーに選出されてから同じ大学3年までのお付き合いであったのだが、わたし自身がプレイヤーとして再起不能の大怪我をしてバスケから離れてしまう直前までのお付き合いの関係…
 いや、尊敬し、大好きなバスケプレイヤーであり先輩といえるのだ。

「あ…あれからすっかりご無沙汰しちゃってすいませんです……」
 わたしはそういった意味の全てを含めてそう告げると…

「ううんそんなこと…
 それより高校の指導者になって大活躍していたのは知っていたのよ、ただ、私が色々と忙しくてさぁ……」
 
 わたしとアイ先輩の二人の間にはそんな懐かしい空気が流れていく……





ストーリーメニュー

TOPTOPへ