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Lの劣情

第1章 2024年6月吉日…

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「………あ、でもね、今日ね、ここに来るってさぁ訊いていたからさぁ、みっきに会える事を楽しみにしていたのよぉ」
 と、アイ先輩はまた再びわたしを抱き締めながら言ってきた。

 ここに…
 それはつまりは今日のこの結婚披露宴パーティーの事。

 今日の主賓の花嫁は、やはり全日本アンダー時代からの盟友であり、わたしとは違ってずうっと華やかな女子バスケット界の中心を歩いてきて、今や、バスケット協会界隈でも重鎮といえる存在であった。

 そしてわたしは…
「そう、みっきがさぁ、○○大学のアシスタントコーチになったって…」

 そう…
 わたしは最近、紆余曲折があったのだが、アイ先輩曰くの地元にある某大学バスケチームのアシスタントコーチに就任し、その流れの関係からこの花嫁とも再会をし、披露宴パーティーに招待されたという経緯があったのである。

「はい、まぁ色々ありまして、断りきれずに…」

「だからさぁ、春の大学トーナメントで再会できるかなぁって思ってたんだけどさぁ、ウチの大学があっさり負けちゃってさぁ……」
 そして再会が延び、今日に至ったんだ…と、アイ先輩が話してきた。

 そんなアイ先輩は…
 180cmという高身長でスタイルも変わらずに抜群で…
 顔が小さく、まるで世界のトップモデルの如くの九頭身…
 そんな彼女は全身黒のレースをあしらったドレスを纏い、髪をアップにまとめて、本当にトップモデルの様な美しく、華やかさを醸し出している。

「本当にアイ先輩は変わらずに綺麗で…」
 と、わたしは16年振りの再会の感動と、感嘆の想いにそう呟く。

「そんなぁ、みっきだって昔と全然変わってないわよぉ…
 それに相変わらずにベリーショートでさぁ」
 そうわたしは春先に気分転換もあり、元々ショートではあったのだが、刈り上げはしないギリギリのベリーショートに髪を切っていたのであり、これは現役バスケ選手時代の髪型とほぼ同じといえたのだ。

「なんかぁ、一瞬、昔に還ったみたいに思っちゃったわぁ」

「え、あ、いや、それは…」

「ふふ、ウソよ、ウソ、もうアラフォーリーチだから、気持ちだけね」
 と、苦笑いを浮かべてくる。

「そうですねぇ、もうヤバいですよねぇ」

「あら、みっき、まさかの?」
 するとアイ先輩はわたしの薬指をさりげなくチェックをし、そう訊いてきた。



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