
微熱に疼く慕情
第3章 【甘く麻痺していく心情】
「えっと、あの、私が行ってる美容室の美容師さんです」
「あぁ、なるほど、どの辺ですか?お店」
え、先輩ったら直接彼に話し掛けてる
一瞬たじろぐ彼だがちゃんと受け答えしてお店の宣伝までしていた
担当者じゃないけど今はそういう事にしておこう
「ではまた、お店行きますね」と会釈して別れた
彼にも先輩だと伝えたがおそらく良くは思っていないだろうな
放置されている身で、他の男と食事には行くんだって思うだろうから
まだこっち見てるってわかるくらい視線感じてる
嫌だよね、飼い主が違うワンコ連れて歩いていたら……
腕組んでなくて良かったってその程度くらいしか思わない私って最低だな
「あんなイケメンの居る美容室行ってるんだ?」
あぁ、こっちもこっちで構ってちゃんが……
「イケメンですか?うーん、私には若過ぎて可愛らしいな…くらいですよ」
「出て行くつもりはなかったけど、あの子、橘さんに会えて嬉しそうな顔してたからついしゃしゃり出ちゃった」
「え……そんな顔してました?そうかな〜?」
「俺は近くに居るだけでドキドキしっ放しなのに、この髪触らせてるんだ?仕事とは言え、ちょっと嫉妬しちゃう俺は引いちゃう?」
えっと、ワイングラス一杯しか飲んでませんでしたよね?
酔ってます?
酔ったフリして独占欲出してくる男の人は嫌いじゃないですけど
「先輩ってかなり嫉妬深いんですね?」
「やっぱり嫌だよな、ごめん」
「んふふ、最初は仕方ないですよ、相手をたくさん知ろうとしてくれてる証拠だもん、寧ろ嬉しいですよ?」
「本当に?ただのガキじゃん…自分でもダセぇなって思うわ」
「私だって嫉妬くらいしますよ、相手を傷付けない程度なら人間として仕方ない事なのかなって思いますけど…」
